広い北海道には、同じ読み方で紛らわしい地名がたくさんありますね!

特に「もんべつ」という読み方の地名は北海道内に複数あって、会話をしているとどこの話をしているか混乱してしまったり、間違って伝わってしまうことがあります。

ここでは、その地名と由来についてまとめてみました。

どうして北海道には「もんべつ」がたくさんあるの?

北海道にある3ヶ所の「もんべつ」について

北海道には、「もんべつ」の名がつく地名が3ヶ所あります。

まずは、それぞれの「もんべつ」の場所とどういう町なのかをおさらいしてみましょう!

⑴ 紋別 – 道東・オホーツク総合振興局
■紋別といえば「ガリンコ号」から大迫力の絶景を見ることができる流氷観光が有名ですね!

紋別(もんべつ)といえば、オホーツク海沿いにある自治体の『紋別市』を指す地名。

また、オホーツク総合振興局にある「紋別郡」のことや、そこに属する遠軽町、湧別町、滝上町、興部町、西興部村、雄武町を総称する場合もあります。

他の「もんべつ」と区別するために、紋の字が“糸へん”であることから『いともんべつ』と呼ばれたり、オホーツク紋別または北見紋別と呼ばれることもあります。

例年、1月下旬~3月の冬の時期には海一面に流氷が押し寄せ、その雄大な景色を見ることができる流氷砕氷船ガリンコ号の観光クルーズが有名ですね!

⑵ 門別 – 道央・日高振興局
■日本有数の馬産地として有名な日高にある「門別競馬場」は最大級の地方競馬場!

門別(もんべつ)といえば、かつて日高支庁管内(現日高振興局)にあった『門別町』を指す地名。

他の「もんべつ」と区別するために、“門”の字から『かどもんべつ』 とも呼ばれていました。

現在は、日高町との合併によって町名としての門別は無くなってしまいましたが、日高町の「門別地区」として町名や住所、JR日高本線の「日高門別駅」や日高自動車道の「日高門別IC」など、その名は多く残っています。

門別の名がつくものとして特に有名なのは、門別競馬場。馬産地としても有名なこの地区にあって、地方競馬で最大級の競馬場として知られていますね!

⑶ 伊達紋別 – 道央・胆振総合振興局
■今も紋別の名が残るJR室蘭本線にある「伊達紋別駅」

北海道には「もんべつ」と読む地名が「紋別」と「門別」の他に、もうひとつあります(ありました)。

それは、『伊達市』のかつての地名であった「紋鼈(もんべつ)村」です。

この地名は伊達市の中心部にあるJR室蘭本線の駅名に「伊達紋別駅」として残っているので馴染み深い方も多いのでは?

伊達紋別とは福島県にある伊達駅と区別するため、旧地名であった紋鼈の字を紋別に変え現在の地名である伊達につなげたものです。

他にも、市内にある紋鼈寺や紋鼈橋などに今もこの地名を見ることができます。

現在の伊達市の名称は、この地を開拓した仙台藩・伊達氏の分家である“亘理伊達家”に由来するもので、紋鼈村と他周辺の村と合併を機に伊達村となったことによります。

どうして「もんべつ」と読む地名が多いの?

なぜ、北海道には「もんべつ」と読む地名が多いのでしょうか?

それは、いずれの「もんべつ」も『モ・ペッ(mo-pet)』というアイヌ語が共通してその語源になっているためです。

なぜ難読が多い?北海道の地名から見えるアイヌ文化

「モペッ(静かな川)」が語源の「もんべつ」

北海道に複数ある「もんべつ」という地名ですが、いずれもその語源となっているのはアイヌ語の『モ・ペッ(mo-pet)』で、これは「静かな・川」を意味しています。

オホーツクにある「紋別」は、アイヌの人たちがこの地に流れている川を「モペッ」と呼び、和人によってその川が「藻鼈川(もべつがわ)」と呼ばれる様になったことに由来しています。

また、日高の「門別」も同様にこの地を流れている門別川に由来しており、「伊達紋別」は気門別川や門別川から由来しています。

さらに、今の静内町にかつてあった「捫別(もんべつ)村」も同じアイヌ語の「モペッ」が語源であったといわれていて、同名の捫別川が東静内町を流れています。

北海道たくさんある「もんべつ川」

「静かな・川」を意味する「モ・ペッ」というアイヌ語が語源になっている『もんべつ』。

ゆえに、北海道内には「もんべつ川」と読んだり「もんべつ」の名が付く川が多くあります。

  • 紋別川 – 長万部町
  • 紋別川 – 広尾町
  • 紋別川 – 千歳市(石狩川水系千歳川支流)
  • 気門別川 – 伊達市
  • 紋別川 – 伊達市(気門別川水系)
  • 小紋別川 – 広尾町
  • 門別川 – 様似町
  • 捫別川 – 新ひだか町
  • 日高門別川 – 日高町

いずれの川も、「静かな川」という語源らしく穏やかな川として知られていて、渓流釣りを楽しむことができたり、鮭が遡上してくる川も少なくありません。

また、独特な風味が美味で人気のアイヌネギ(行者ニンニク)はきれいな水辺を好み、その群生地として知られている川も多くあります。

「標津」と「士別」も川に由来するアイヌ語が語源

■「しべつ」も同じ読み方の地名が2ヶ所ありますね!写真は士別市にあるサフォーク羊の牧場

北海道には同じ読み方をする地名が「もんべつ」の他に「しべつ」がありますね。

「標津(しべつ)」は、道東の知床半島の付け根の海沿いにあって、日本有数の鮭の産地として知られている町です。

一方、「士別(しべつ)」は、道北の内陸に位置する盆地にあって、サフォーク羊の産地として知られていますね。

この2つの「しべつ」も『シ・ペッ(si-pet)』というアイヌ語が共通の語源になっていて、これは「大きい・川」を意味しています。

静かな川を意味する「モペッ」と大きな川を意味する「シペッ」という、どちらも川に由来するアイヌ語が語源になっているのは、とても興味深いですね!

「えさし」と読む地名も2ヶ所ある!?

■檜山振興局に属する道南の町・江差町にある「いにしえ街道」は観光にも人気のスポット!

道北のオホーツク海に面する「枝幸町」と、道南の日本海に面する「江差町」も、どちらも「えさし」と読む地名ですね。

こちらもアイヌ語が語源となっていて、「頭が・浜・についている・所」つまり「岬」のような場所を意味する『エサウシイ(e-sa-us-i)』から由来しています。

このように、その土地の特徴を表すアイヌ語が語源となっている地名も北海道には数多く残っているんですよ!

北海道には「えさし」という町が2ヶ所ある?!北の枝幸と南の江差、なぜ同じ地名なの?