地震発生時、札幌では同じ市内であっても区によって震度が異なることがあります。

札幌でも大きく揺れた2018年の「北海道胆振東部地震」では、揺れ方だけでなく被害の状況も区や地域によって大きく違ったものでした。

その理由は、札幌の特徴的な地形や地質に関係しているというのを知っていますか?

市内でも区によって揺れが違う?!札幌の地質の特徴とは

札幌でも大きな揺れを経験した「北海道胆振東部地震」

■ 厚真町で震度7を観測した北海道胆振東部地震、札幌での最大震度は震度6弱でした

2018年に発生した北海道胆振東部地震では、札幌においてもそれまでの観測史上で最大の震度6弱を東区で観測したのをはじめ、北区、白石区、清田区、手稲区でも震度5強の強い揺れがありました。

東区の東15丁目屯田通では4kmに渡って断続的に道路が陥没した他、清田区里塚では大規模な地盤沈下で家屋が傾くなど大きな被害がありました。

一方で、中央区や南区では震度3〜4で、棚から物が少し落ちる程度など被害が最小限であった地域もあります。

なぜ、札幌では同じ市内であっても、これほど揺れや被害の大きな違いがでたのでしょうか?

札幌市10区別の過去最大震度と地震の回数まとめ

北海道胆振東部地震のときのように、札幌では同じ市内であっても区や地域によって地震の揺れ方や被害が大きく異なることがあります。

観測点震度5弱
以上
震度4
以上
震度3
以上
最大震度
中央区北2条013震度4
南4条013震度4
北区太平0316震度5強
篠路1316震度5強
新琴似2317震度5強
東区元町1822震度6弱
白石区北郷1722震度5強
豊平区月寒東129震度5弱
南区定山渓温泉001震度3
真駒内027震度4
簾舞005震度3
川沿012震度4
石山013震度4
西区琴似124震度5弱
厚別区もみじ台1315震度5弱
手稲区前田2312震度5強
清田区平岡1310震度5強

気象庁震度データベース検索より

上の表は、過去10年(2012年8月以降)で札幌市内10区にある計17ヶ所の観測点で観測された最大震度と、震度3弱以上、震度4以上、震度5以上の回数をそれぞれまとめたものです。

これをみても、札幌は同じ市内であってもより大きな揺れになりやすい地域と、そうでない地域があることがわかります。

同じ札幌市内なのに震度が違うのはなぜ?

■ 地震の影響で陥没した東区の東15丁目屯田通の様子

では、なぜ札幌市では区や地域によって、これほど地震のときの揺れや被害に大きな違いがでたのでしょうか?

札幌の地盤は、市内で最古の地層である「薄別層」を基盤に、南西部の山地、南東部の丘陵地・大地、豊平川の扇状地、北東部の低湿地の4つの地形で成り立っています。

  • 南西部の山地
  • 南東部の丘陵地・台地
  • 豊平川の扇状地
  • 北東部の低湿地

この地形の成り立ちや地質とそれによる宅地造成の歴史が、地震のときの揺れ方の違いに関係しています。

豊平川の扇状地とその終端から広がる泥炭地
■ 札幌の豊平川と広がるまちの様子

札幌の水道水の98%をまかない、札幌のまちの景観を特徴づける豊平川は、市民にとって最も親しみがある川といえます。

その豊平川が、今からおよそ4〜1万年前に流路を変えながら運び堆積した砂礫層や粘土層が重なってできた扇状地にあたるのが、現在の「中央区」や「南区」「豊平区」の一部で、この地域の地盤は締まりが良く強いため地震のときにも揺れが少ない地域です。また、「西区」の一部も発寒川の扇状地として同様に揺れが少ない地域です。

一方、これらの扇状地の終端から北に広がるのが、現在の「北区」「東区」と「白石区」や「手稲区」の一部にあたる低湿地帯で、ここは石狩湾の海岸線が今よりも5kmほど内陸にあった6,500〜6,000年前の「縄文海進」と呼ばれる時代には海が広がり、その後に海水面が下がり湿性植物が繁茂すると泥炭地となった地域です。

このような土地では地盤が緩いため地震のときには揺れが大きくなりやすく、北海道胆振東部地震では東区元町で札幌での観測史上最大の震度6弱を記録しました。

南西部から南東部に広がる山地と丘陵地・台地
■ 観光で人気の羊ヶ丘も支笏火山の噴火でできた台地

札幌のまちは、扇状地や低湿地帯だけでなく南西部から南東部にかける山地や丘陵地・台地にも広がっています。

南西部には600万年前からの火山活動で形成された円山や藻岩山をはじめとした山地があり、これらの麓や山中あたる「中央区」や「南区」の一部は揺れが小さく、特に南区定山渓では北海道胆振東部地震でも震度3と市内でもっとも揺れが小さかっただけでなく過去10年間においても震度3以上の揺れはこの1回以外に観測されていません。

一方で、現在の「厚別区」「清田区」と「豊平区」の一部にあたる南東部では、250万年前以降のプレートの衝突によって形成された野幌丘陵や、約4万年前の火山活動で現在の支笏湖が形成された火山の噴火によって流れてきた火山灰が冷え固まった月寒台地が広がる地域です。

このような丘陵地や台地は地盤が良い特徴がありますが、宅地として崩した火山灰質土による盛土で造成されている場合には地盤が不安定になり、北海道胆振東部地震の清田区里塚での液状化現象の被害は、これが要因のひとつになったと考えられています。

住んでいるまちの地質を知って災害対策を

■ 地震の影響で停電した札幌市南区簾舞の信号機

4つの地形で複雑に成り立っている札幌のまち。

地震の揺れの大きさは地質や地盤が大きく関係していますが、それだけで防災対策を考えることはできない一面もあります。

比較的揺れに強いといわれる山地や山に近い地域であっても、特に揺れが大きい地震では地すべりなど土砂災害のリスクが伴い、ひとたび災害が起きればその被害は甚大になります。

さらに、扇状地であっても川に近い低地では近年の北海道でも増えている台風や豪雨による河川の氾濫という別のリスクも孕んでいます。

住んでいるまちの地形や地質の特徴をよく知り、さまざまな災害リスクを想定した防災対策が重要といえそうです。