湊かなえさんの『物語のおわり』という小説を知っていますか?

この小説は、北海道を旅する人たちそれぞれの人生の困難やそれを乗り越え明日への一歩を踏み出していく様子が書かれていて、道内の有名な観光スポットもたくさん登場します。

北海道好きな方はもちろん、北海道在住の方にもぜひ読んで欲しいと思うおすすめの一冊です。

湊かなえ「物語のおわり」のあらすじと聖地巡礼まとめてみました!

「物語のおわり」ってどんな小説?

参照:Amazon「 物語のおわり」湊かなえ

湊かなえさんといえば、「告白」や「Nのために」など、数々のヒット作を生み出してきたベストセラー作家。テレビドラマ化や映画化された作品も多いので、知っている方も多いですよね。

作品は重厚なテーマの本格ミステリーや推理小説が中心で、“読後にイヤな気持ちになるミステリー”から「イヤミスの女王」としても知られていますが、本作『物語のおわり』は、前向きな爽やかさで湊かなえさんの違った一面を垣間見ることができる、全編にわたって北海道が舞台になっている群像小説です。

北海道を舞台に人生の困難と明日への一歩を描く群像小説
■ 北海道好きな方、これから北海道を旅行する方、そして北海道在住の方にもぜひ読んでもらいたい一冊!

『物語のおわり』は、山陰の小さな山間の町に住む少女・絵美の結末がない私小説から始まります。

「空の彼方」と題したこの私小説は、遠く離れた北海道の地を旅する人生の困難に立たされた人たちの手に渡っていき、受け取った人たちはそれぞれの人生と重ねながら結末を想像し、明日への一歩を踏み出していきます。

そんな様子を、丁寧に描写された北海道の大自然を背景に綴られていくのが本作です。

札幌や小樽、富良野・美瑛、網走、知床、そして洞爺湖や摩周湖など、これほど広く北海道を舞台にしている小説は、そうありません。北海道好きな方、これから北海道を旅行する方、そして北海道在住の方にもぜひ読んでもらいたい一冊です。

文庫本の巻末の解説を、水曜どうでしょうのディレクターでお馴染みの“ヒゲ”こと藤村忠寿さんが書いているのも、北海道とのゆかりを感じさせてくれますね。

小説「物語のおわり」の聖地巡礼&あらすじ

■ 北海道の大自然を背景に綴られる群像小説の『物語のおわり』

ここからは、湊かなえさんの小説「物語のおわり」に出てくる、聖地巡礼におすすめのスポットを<前編>と<後編>の二回に分けてお届けします。

早速、あらすじと印象的なシーンを振り返りながら、めぐっていきましょう!

これ以降、物語の核心や結末には触れていませんが、一部あらすじ等にネタバレを含みます。まだ小説を読んでいない方はご注意ください。
⑴ 過去へ未来へ
■ “俺は船尾が好きだな。船が辿ってきた跡を見ることができる。”(作中より引用)

〜あらすじ〜

智子はフェリーで北海道に向かっていた。

二十年前、今と同じようにフェリーで共に旅した父は、直後に直腸癌で他界した。この時の旅は、余命を知った父が智子との思い出を作るためのものだったのだ。

奇しくも父を失ったのと同じ病を宣告された智子は、妊娠中だった。智子もまた、お腹に宿した新しい命との思い出を作るため、父の記憶を辿りながら北海道へ向かうフェリーで、萌という少女から「空の彼方」を受け取る。

ーー

■ “生まれたての光は眼球を通じてからだの芯まで温めてくれる。”(作中より引用)

智子が乗った舞鶴港から小樽港までのフェリー航路は、新日本海フェリーの「はまなす・あかしあ」がおよそ21時間で結んでいますが、作中に出てくる『ひまわり』というフェリーは、実際には存在していません。

小樽港への到着は作中と同じ午後8時45分で、この航路からは、もちろん東の水平線に昇る朝日を見ることができます。

ちなみに、大洗港と北海道の苫小牧港とは、商船三井による「さんふらわあ」というフェリーが運行されていて、なんとなく作中の『ひまわり』を連想させる名称ですが、こちらは太平洋側の航路になります。

北海道への旅行でフェリーを選ぶことはあまりないかもしれませんが、バイクや自転車でのツーリング旅行はもちろん、自分と向き合う時間をたっぷり持ちたい旅にもフェリーはピッタリです。

小樽フェリーターミナル
小樽市築港7-2
  1. 営業時間 : 3:30 - 23:30
    ※フェリー運航ダイヤにより変更あり
  2. 住所 : 小樽市築港7-2
  3. TEL : 0134-22-6191
  4. アクセス: JR小樽駅から約2.8km、車で約10分。JR小樽築港駅から約1.8km、車で約5分。
    駐車場:あり
⑵ 花咲く丘
■ “展望台に到着すると、まずは、公園のシンボルである鐘の前で写真を撮る。”(作中より引用)

〜あらすじ〜

富良野のラベンダー畑を訪れている拓真。

父が他界し、家業の小さなかまぼこ工場を継ぐことを迫られた拓真は、あと少しで叶えられそうなプロの写真家になる夢と決別するため、夢の始まりとなったこの地にやってきたのだった。

生まれてくる我が子に一緒に旅をしたことを見せるために写真を撮る妊婦の智子と美瑛のパッチワークの丘で出会い、自分の写真にあと一歩足りないものに気付かされ、見送りの美瑛駅で「空の彼方」を受け取る。

ーー

■ “『拓真館』の拓真くんは、やっぱり写真関係の仕事をしているの?”(作中より引用)

北海道を代表する人気観光エリアの富良野・美瑛が舞台となるこの章で登場する場所は、いずれも実在する観光スポット!

作中の冒頭に出てくる『日の出公園ラベンダー園』は、農作物として初めてラベンダーが栽培された発祥の地として知られる上富良野町の小高い丘の上にある人気観光スポットです。

そこから丘の景色の中を20分ほど車を走らせると、切妻屋根と時計塔のようなエントランスが印象的な写真家・前田真三のギャラリー『拓真館』に着きます。

拓真館
美瑛町字拓進 拓真館
  1. 営業時間 :  
    9:00 - 17:00(5〜10月)
    10:00 - 16:00(11〜4月)
    ※冬季休館あり
  2. 住所 : 美瑛町字拓進 拓真館
  3. TEL : 0166-92-3355
  4. アクセス:JR美瑛駅から約9.2km、車で約13分。
    駐車場:あり(無料)
■ “「じゃがいもも白い花なんだ」花を眺めながら、腹に片手を添えてつぶやいている。”(作中より引用)

国道を挟んだ反対側はパッチワークの路として、作中にも出てくる『ぜるぶの丘』『北瑛小麦の丘』『ケンとメリーの木』などの有名スポットが盛りだくさん!

拓真や智子のように、旅の思い出をカメラにたくさん収めたくなるような景色が広がるエリアです。

ちなみに、じゃがいもの花が咲く時期は、6~7月。ラベンダーの最盛期の7月上~中旬とも重なりますので、作中に出てくるような風景を見るなら、初夏がおすすめですよ!

パッチワークの路
美瑛町美田 パッチワークの路
  1. 営業時間 : -(24時間)
  2. 住所 : 美瑛町美田 パッチワークの路
  3. TEL : -
  4. アクセス:美瑛駅からパッチワークの路の入り口まで約1.8km、車で約5分。
⑶ ワインディング・ロード
■ “深山峠に差し掛かる。左前方に大きなレストハウスが見えた。バターの香りに惹かれて、そちらへ体を傾ける。”(作中より引用)

〜あらすじ〜

綾子は、国道237号を富良野から旭川に向けて、自転車で走っていた。

同じ名前を持つ作家・三浦綾子に出会ったのは高校二年生。自分でも物語を作りたいと大学では文芸同好会に入ったが、挫折した。ならば物語を映像化する仕事をしてみたいとテレビ番組の制作会社へ就職が内定していた大学生最後の夏、二度目の北海道のツーリングだった。

物語を作る才能がない自分がそんな仕事をして良いのかと悩む綾子は、旭川にある三浦綾子記念文学館がある外国樹種見本林で出会った拓真から背中を押されるように「空の彼方」を受け取る。

ーー

■ “小説を読むならば、とそのまま見本林内にある小さな広場のベンチに腰掛け、封筒からコピー用紙の束を取り出した。”(作中より引用)

綾子がランドナーというツーリング用の自転車で富良野から旭川へ向かう国道237号のこの区間は、別名“花人街道”とも呼ばれるほど人気の観光ルートになっていて、前章でも出てきたスポットも多くがこの道の沿線近くにあります。

『深山峠』は上富良野町の北部、美瑛町に入る少し手前にある丘陵で、峠というほど急峻な場所ではありませんが、パノラマが広がる“かみふらの八景”のひとつに数えられている観光スポットです。

旭川市内に入り、コンビニで拓真に出会ったあとに訪れた『三浦綾子記念文学館』は、その後に拓真と再会する『外国樹種見本林』の敷地内にあります。

この外国樹種見本林は、三浦綾子さんの「氷点」という小説の舞台にもなった場所です。見本林内には作中にも登場するようにベンチがあります。きっと智子はここで「空の彼方」を読んだのでしょうね!

外国樹種見本林
旭川市神楽7条8丁目
  1. 営業時間 : -(24時間)
  2. 住所 : 旭川市神楽7条8丁目
  3. アクセス:JR旭川駅から約1.8km、車で約4分、徒歩で約20分。
    駐車場:あり(無料)

<前編>はここまで!<後編>に続きます。

聖地巡礼の<前編>はここまで。

小説の前半では、北海道へ向かうフェリーから始まり、美瑛・富良野といった北海道を代表する人気観光エリアがたくさん登場しました。北海道の雄大な自然や人気スポットがとても丁寧に描写されているのが、この『物語のおわり』という小説をさらに魅力にしていますね。

絵美の結末がない私小説「空の彼方」のバトンは、まだまだ続きます。ぜひ<後編>もチェックしてくださいね!

北海道が舞台!湊かなえ「物語のおわり」のあらすじ&聖地巡礼<後編>