人生の困難と明日への一歩を描く湊かなえさんの群像小説「物語のおわり」。

その舞台となる北海道。今回は、聖地巡礼におすすめのスポットを二回に分けてお届けする<後編>です。

湊かなえ「物語のおわり」のあらすじと聖地巡礼まとめてみました!

湊かなえ「物語のおわり」とは?

「告白」や「Nのために」など、数々のヒット作を生み出してきたベストセラー作家として知られる湊かなえさん。

重厚なテーマの本格ミステリーや推理小説の作品が多い中、前向きで爽やかな作風で違った一面を垣間見ることができる『物語のおわり』は、全編にわたって北海道が舞台になっています。

北海道好きな方、北海道在住の方、そして北海道旅行の旅のお供にもおすすめの一冊ですよ!

小説「物語のおわり」の聖地巡礼<後編>

■ 北海道好きな方、これから北海道を旅行する方、そして北海道在住の方にもぜひ読んでもらいたい一冊!

ここからは、湊かなえさんの小説「物語のおわり」に出てくる、聖地巡礼におすすめのスポットの<後編>をお届けします。

この記事からお読みいただいている方は、ぜひ<前編>もチェックしてみてくださいね。

では早速、あらすじと印象的なシーンを振り返りながら、めぐっていきましょう!

これ以降、物語の核心や結末には触れていませんが、一部あらすじ等にネタバレを含みます。まだ小説を読んでいない方はご注意ください。
⑷ 時を超えて
■ “唯一湖面が見られた場所ということで、俺の中では裏摩周展望台は、湖めぐりに外せないコースとなった。”(作中より引用)

〜あらすじ〜

赤いバイクで北海道の湖めぐりをする木水。

京都の短大で学ぶ娘が、特殊造形を勉強しにアメリカへ行きたいと言い出したが、受け入れることができずにいた。妻も、泣いて京都へ戻った娘を追って、出て行った。待つことに耐えかねた木水は、二十年前の学生時代にツーリングで回った北海道へ再びやってきたのだった。

道中の摩周湖で出会った娘と同世代の綾子に、網走湖畔にあるライダーハウスで思いがけず再会すると、娘の夢のきっかけが自分の二十年前のツーリングにあったことを気付かされ、綾子から「空の彼方」を受け取る。

ーー

■ “摩周湖の伏流水が湧く池に、倒木が枯れずに沈む神の子池は、…青い水を湛えた神秘の湖だ。”(作中より引用)

メタリックレッドのバイク・カタナで北海道にやってきた木水。

作中に出てくる『オンネトー』『阿寒湖』『摩周湖』『屈斜路湖』『神の子池』『濤沸湖』『網走湖』『サロマ湖』はいずれも実在する湖で、人気の観光地。

また、この地域はバイクや自転車のツーリング旅行では聖地とされるスポットも多く存在しています。

摩周湖には出世や結婚のジンクスがあり、3ヶ所ある展望台のうち、水木が最初に綾子と会ったのが『裏摩周展望台』です。

この裏摩周展望台すぐ近くには『神の子池』があり、周囲220m、水深5mの小さな池ですが、その透明度の高さと、年間を通して水温が低いことから倒木が枯れずに残る神秘的な光景が話題となり、道東観光で人気のスポットになっています。

神の子池
郡清里町清泉 神の子池
  1. 営業時間 : -(24時間)
  2. 住所 : 郡清里町清泉 神の子池
  3. アクセス:裏摩周展望台から約11km、車で15分、自転車で約30分。
    駐車場:あり(無料)
■ “ライダー仲間から、訪れなかったことをもったいないと言われた場所が二つある。…もう一つが博物館網走監獄だ。”(作中より引用)

『博物館 網走監獄』は、かつて網走刑務として実際に使われていた獄舎が移築、公開されている歴史博物館です。

見どころは、すべての舎房が監視できるように見張所を中心に5つの舎房が放射状に建てられている五翼放射状平屋舎房と当時の囚人の様子を垣間見ることができるリアルな蝋人形。

作中にある通り、道東に行くならぜひ訪れたい、見応え満載の観光スポットです!

博物館 網走監獄
網走市字呼人1-1
  1. 営業時間 : 9:00 - 17:00
    ※季節により変動する場合あり
  2. 住所 : 網走市字呼人1-1
  3. TEL : 0152-45-2411
  4. 入館料:[大人] 1,500円/[高校生] 1,000円/[小中学生] 750円
    駐車場:あり(無料)
⑸ 湖上の花火
■ “ティーラウンジでコーヒーを注文した。一杯、二千円。”(作中より引用)

〜あらすじ〜

洞爺湖を見下ろす山の上の立つ高級リゾートホテルに、あかねはいた。

北海道大学で学んだ時の恩師を囲む会にあわせて、一泊余分に休暇をとって足を伸ばしたのだった。卒業後は、証券会社に就職した。以来、自己投資を続け、今では課長の肩書きがついている。

学生時代、ツーリングで北海道に来ていた彼と出会ったのも洞爺湖だった。しかし、次第に夢を追い続ける彼を応援してあげられることが出来なくなり、交際は十年で終わった。娘の夢を応援したい、という木水に出会い、洞爺湖の花火大会の後「空の彼方」を受け取る。

ーー

■ “洞爺湖と内浦湾を見下ろす山の上に立つこのホテルの、…ハリウッドスターも宿泊したことがあるという高級リゾートホテルで、…”(作中より引用)

あかねが宿泊している『リゾートホテル・ザ・ローツェ・洞爺湖』は架空のホテルですが、このモデルとなったのは、間違いなく「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」でしょう!

洞爺湖と内浦湾を見下ろす山の上という描写からも明らかですが、このホテルは作中にある通り北海道で屈指の高級リゾートホテルで、2008年に第34回主要国首脳会議(G8サミット、通称:北海道洞爺湖サミット)の会場になったことでも知られています。

■ “打ち上げ台から斜めに軌道を描き、湖面すれすれのところで花が開いた。クジャクの羽のようだ。”(作中より引用)

あかねが学生時代に友人とはぐれ、脚本家を目指す彼と出会った洞爺湖畔の温泉街で開催される花火大会は、例年4月下旬から10月にかけて、連日花火が打ち上げられる「洞爺湖ロングラン花火大会」です。

温泉街に宿泊している観光客はもちろん、8月の夏祭りの季節には露店も出て、多くの人で賑わいます。

湖上の船から打ち上げられる花火は水面に反射して、まさにクジャクの羽のように広がる様子は、とてもロマンチックですよ!

洞爺湖町洞爺湖温泉
  1. 営業時間 : -(24時間)
  2. 住所 : 洞爺湖町洞爺湖温泉
  3. ※支笏湖ロングラン花火大会は、例年4月下旬~10月下旬の毎夜20:45~約20分間
⑹ 街の灯り
■ “…我が母校を見せてやるのは、妻と四十年越しの約束だったのだから。”(作中より引用)

〜あらすじ〜

佐伯は、同窓で母校である北海道大学の教授となった清原の退職記念パーティーに出席するため、札幌へ来ていた。

本来であれば、妻も一緒に来るはずだった。自分の母校を案内するのは、四十年越しの約束だったからだ。しかし、孫娘・萌が不登校になると、妻と萌は気分転換の旅に出ると行き先も告げずに出ていってしまったのだった。

数十年ぶりに揃った同じ釜の飯を食った仲間と散々飲み食いした後、北大の正門に向かうタクシーの中で、教え子から佐伯の忘れ物ではないかと預かったという茶封筒を、清原から受け取った。

ホテルに戻り茶封筒の中身を確認すると「空の彼方」と題された小説のようだった。そして、それは紛れもなく妻をモデルにした小説だったのだ。

ーー

■ “広い構内ではあるが、目指す場所は誰かが口にしなくとも、皆、わかっていた。高台に建つ大学創設者像の前だ。”(作中より引用)

佐伯(ハムさん)の母校として登場するのが『北海道大学』です。

北海道大学は、札幌市の中心部に広大な敷地を持つ国立大学で、自然豊かな構内には大学博物館や数多くの歴史建造物、ポプラ並木や銀杏並木などの名所が盛りだくさんで、札幌の人気観光スポットにもなっています。

■ “「同じだ……」ここからの夜景は、学生時代、私の一番好きな眺めだった。”(作中より引用)

作中の、退職記念パーティーの2次会の後に大学創設者像を背に同窓の4人が並んで夜景を眺める、という印象的なシーン。

北大には大学創設者といえるような人物はいませんが、その前身となる札幌農学校の初代教頭のクラーク博士の胸像が正門から入ってすぐの場所にあります。

しかし、このクラーク像があるのは中心部の夜景が見える高台ではなく、そもそも北大構内には高台といえるような場所はありません。

夜景が見えるような高台といえば、あの右腕を伸ばしたクラーク博士像がある羊ヶ丘展望台が有名ですが、ここは札幌の中心部にある北海道大学からは随分と離れた市内郊外にあり、しかも開園しているのは夕方5時までなので、残念ながら実際には夜景を見ることはできません(過去には期間限定で夜間特別開放がされたことはあります)。

この点についてはかなり創作が含まれていると考えられますが、都会さと自然の調和がとれた札幌らしい景観が描写された印象的なシーンですね。

北海道大学
札幌市北区北8条西5丁目
  1. 営業時間 : -(24時間)
  2. 住所 : 札幌市北区北8条西5丁目
  3. TEL : 011-716-2111
  4. 駐車場:なし(近隣にコインパーキングあり)
⑺ 旅路の果て
■ “「萌ちゃん、ヒグマよ、ヒグマ!」…茶色いヒグマが子供を2匹連れて、海岸沿いの岩場を歩いている。”(作中より引用)

〜あらすじ〜

萌は、祖母と二人で知床に来ていた。

同じ小説家になる夢を持ち才能がある友人を妬み、夢を妨害してしまったことで、自身も引きこもるようになった萌を、祖母が連れ出してくれたのだった。

ある時、萌は祖父母と暮らす二世帯住宅の書斎から、祖母が書いた小説を見つけた。それは手記のようでもあった。結末はなかったが、答えはこの町で暮らし続けてきた祖父母が物語っているように思われた。

萌は、自分と友人のことをこの小説に重ねながらパソコンで打ち直し、旅のあいだ持ち歩くことにした。しかし、早々に北海道へ向かうフェリーで出会った智子に手渡すことにした。智子なら、どんな結末を想像するか気になったからだ。

そして最果ての地・納沙布岬で、萌は祖母の小説の本当の結末を知ることになる。

ーー

■ “…クルーズ船に乗った。…世界自然遺産にも登録されている知床半島の自然を、海から眺めるというコースだ。”(作中より引用)

萌とおばあちゃんが訪れている『知床』は、2005年に世界自然遺産に登録された道東を代表する観光地です。

手付かずの大自然が残り人が立ち入ることができない半島を海から見ることができるクルーズは、知床観光の人気のひとつになっています。

■ “おばあちゃんとあたしは納沙布岬の先端へと歩いていった。「日本最東端ね」”(作中より引用)

萌が友人にしてしまったひどい仕打ちの告白、そしておばあちゃんの小説の本当の結末が明らかになる、日本本土最東端の地『納沙布岬』。

ここは年間を通して強風が吹き荒ぶことで背に高い木々が育たず泥炭が広がる、まさに最果ての地です。

そしてこの小説のラストシーンでは、これまで人生の困難に立つ人たちの背中を押すきっかけを作った萌自身の明日へ踏み出す地となり、晴れやかなエンディングを迎える地となりました。

納沙布岬
  1. 営業時間 : -(24時間)
  2. 住所 : 根室市納沙布 納沙布岬
  3. TEL : -
  4. 駐車場:あり(無料)

「物語のおわり」に描かれているのは作者の実体験?!

人生の困難に立たされた人たちが「空の彼方」という結末がない私小説を手にして明日への一歩を踏み出していく様子を、丁寧に描写された北海道の雄大な自然を背景に書かれていて、とても魅力的な『物語のおわり』という小説。

実は、作者の湊かなえさん自身も学生時代に北海道を自転車で一周したご経験があるそうです。

それは大学2年生のとき。3週間にわたってユースホステルに泊まりながら道内を一人旅をされたそうで、なんだか作中に登場するランドラーで北海道を旅する綾子と重なる部分が多いですね!

美しい北海道の大自然の風景をバックに、明日への勇気をもらえるような小説の『物語のおわり』。

北海道好きな方、北海道在住の方、そしてこれから北海道の旅行を考えている方で、もしまだ読んだいない方は、ぜひ手にされてみてはいかがでしょうか?!

北海道が舞台!湊かなえ「物語のおわり」あらすじ&聖地巡礼<前編>