“北海道医療大学”から“新十津川駅”までの約48kmの区間が2020年5月7日に廃止となることが決定しました。札沼線の歴史は古く、かつて北海道で多く採掘された石炭の輸送を目的に“石狩沼田”と“札幌”を結ぶ路線として1935年に全線開通。以来、時代の変化とともに地域住民に親しまれてきた鉄道です。
そんな札沼線の歴史を振り返りながら、廃線に至る経緯や現在の状況、今後についてまとめてみました。
2020年5月7日ラストラン!札沼線の廃線についてまとめてみました。
札沼線とは?
現在の札沼線は”札幌駅”と”新十津川駅”を結ぶ全長76.5kmの鉄道。かつては”新十津川駅”のさらに先、”石狩沼田駅”までを結ぶ鉄道路線でした。「札沼線」の名称も、札幌の「札」と沼田の「沼」が由来となっています。
ちなみに読み方は「さっしょう線」、たまに「さつぬま線」と間違った読み方をされてしまうこともあるようです。札沼線は、札幌市民や北海道民にとっては「学園都市線」という愛称の方が馴染み深く、駅構内の案内や日常の会話でもこの愛称が使われていることが多いですね。
新十津川〜石狩沼田間の廃線と赤字83線
札沼線は”新十津川駅”のさらに先、”石狩沼田駅”までを結び、留萌本線と接続する鉄道路線で、かつて北海道で豊富に採掘された石炭や貨物など、留萌の港へや札幌方面への輸送に石狩川を挟み並行する函館本線のバイパス路線としての役目を担っていました。
しかし、徐々に貨物の輸送需要が減少してくると“新十津川”から“石狩沼田”までの区間は「赤字83線」の取り組みの中、1972年の6月に廃線となったのです。
この赤字83線とは旧国鉄時代、沿線人口が少なく旅客・貨物の需要も少なく“使命を終えた”として廃止やバスでの輸送に転換していった取り組みです。北海道内ではこの取り組みによって、同時期の1970年に“斜里”と“越川“を結んでいた“根北線”の12.8kmの全線が廃止になっています。
また、赤字83線としての廃止は免れたものの、その後に白糠線、相生線、渚滑線、岩内線、興浜北線、興浜南線、美幸線、富内線、瀬棚線、湧網線、標津線、深名線と多くの路線が相次いで廃線となりました。
北海道にはかつて、こんなにもたくさんの地方路線があったのですね。
近年では、「江差線」の“木古内駅”から“江差駅”間が2014年5月に廃線、“木古内駅”から“五稜郭駅”間は並走する北海道新幹線の開業に伴い2016年3月に廃線となり、この区間は現在、第3セクターの道南いさりび鉄道に運営が移管されています。
北海道の人口の4割近くが札幌圏に集中する中、今後も地方路線の廃線は進むことになりそうです。
廃線後はどうなるの?
“石狩金沢駅”から“本中小屋駅”、“中小屋駅”、“月ケ岡駅”と国道275号線と並行しており、国道沿いの駅が続きます。やがて月形町の街に近づいてくる“知来乙駅”、月形町の中心部にあり比較的乗降客の多かった“石狩月形駅”までの石狩当別〜石狩月形の区間は、この国道を走るバスが新規で運行されることになるようです。
札幌方面に向かうには石狩当別駅でバスからJRへ乗り換えることで今まで数便だったJRを利用するよりも利便性が増しそうですね。もとより国道275線沿いにあり札幌方面への交通アクセスは比較的良いのでこれまでもマイカーを利用していた方も多いようです。
“豊ヶ岡駅”から“札比内駅”、“晩生内駅”、“札的駅”、“浦臼駅”の区間は石狩月形〜浦臼間で新規のバスが運行されます。また、このあたりは石狩川を超えた対岸の奈井江町、岩見沢市へ向かう方も多く、そちらへの既存バスの利用や新規でバスが運行されるようです。
函館本線とほぼ平行する“鶴沼駅”、“於札内駅”、“南下徳富駅”、“下徳富駅”、“新十津川駅”の区間は奈井江や滝川への既存バスの利用を促されることになるようです。石狩川対岸の奈井江、砂川、滝川からも近いので、もとより滝川経由での移動をされている方が多いようですね。
岩見沢や奈井江、砂川、滝川は国道12号線が通るほか、JRの函館本線、高速道路の道央自動車道も通る道北へのメインルートとなっていますね。
札沼線の駅と沿線について
札幌駅〜新川駅
札沼線は“桑園駅”から“新十津川駅”までを結ぶ路線ですが、路線の起点である“桑園駅”が始発もしくは終点になる列車はなく、乗降客の多い1駅先の“札幌駅”が始発、終点になっています。札幌駅では北側の9番・10番ホームが札沼線のホームとなっていますね。
札沼線の利用客は、そのほとんどが札幌駅を利用する乗降客です。
札幌駅から“桑園駅”、“八軒駅”、“新川駅”と札幌中心部から比較的近いこの辺りの沿線は住宅地となっています。それぞれ多くの乗降客数があり、新川駅は札沼線で3番目、篠路駅は4番目の乗降客数がある駅です。
新琴似駅
新川の次の駅、”新琴似駅“は札沼線で最も乗降客数のある駅です。
地下鉄南北線の北の終点である麻生駅からも近く、麻生には各方面へ発着するバスターミナルがあり、周辺は商業施設も充実していますね。石狩方面や屯田方面などからバスで来て、新琴似からJRを利用する方や、JRから地下鉄への乗り換えをする方も多いようです。
太平駅〜拓北駅
その先の“太平駅”、“百合が原駅”、“篠路駅”、“拓北駅”も住宅地として栄えています。
あいの里教育大前駅・あいの里公園駅
さらに札沼線を進みと、“あいの里教育大前駅”、“あいの里公園駅”です。
あいの里は札幌北部のニュータウンとして整備された住宅地。綺麗な街並みと住みよい環境が人気のエリアですね。あいの里教育大前駅は札沼線で2番目に乗降客の多い駅です。札幌中心部への通勤通学はもちろん、北海道教育大学への通学にも多く利用される駅です。
あいの里公園駅はあいの里の住宅街の東端、札幌市最北端の駅です。この駅は無人駅ですが、JR北海道における無人駅の中では最も利用客の多い駅だそうです。
石狩太美駅・石狩当別駅
石狩川を超えると札沼線は札幌市から当別町に入ります。
“石狩太美駅”は無人駅。当別町の西部にあたるこの辺りは札幌のベッドタウンとしても栄えていて、まるで北欧のような街並みのスウェーデンヒルズや自然豊かな環境の住宅地が整備されています。
“石狩当別駅”は当別町の街中にある駅で、札沼線では5番目に乗降客のある駅です。
北海道医療大学駅
“北海道医療大学駅”は、その名の通り北海道医療大学の前にある駅です。
駅周辺は田園風景が広がり大学以外に目立つものはなく、この駅の利用はほとんどがその通学の利用客になっています。
この駅は札沼線の電化区間の終点になっていて、これより北は電化されていません。運行ダイヤの多くはこの駅を終点にしていて、この駅で折り返し運転になります。
石狩金沢駅〜新十津川駅
北海道医療大学から先のこの区間が、2020年5月7日を最後に廃線となる区間です。
この間およそ48km、16の駅が消滅することになります。この区間はもとより利用客数が少なく、運行本数も極端に少ない路線です。
各駅の利用客は石狩月形駅が数百人、浦臼駅が数十人の他はいずれも1桁のわずか数人。運行本数が少ないのもありますが、利用客は極端に少ない区間です。
終点の新十津川駅に乗り入れる列車は1日1往復のみです。終発は降り列車の折り返し運転の午前10時となり、日本一終発の早い駅になっています。札幌への直通列車もなく、石狩当別駅での乗り換えが必要になります。
また、電化もされていないこの区間は気動車(ディーゼルカー)のワンマンで運行され、石狩月形駅の朝の始発登りが2両編成となる他は全て1両(単行)での運行になっています。
ラストランは2020年5月7日!!
札沼線の新十津川駅発のラストランは2020年5月7日です。
廃線となりレールがなくなってしまうと、もう二度と列車が通ることができなくなるのが鉄道です。
バスなど代替交通が用意されているとはいえ、極端に利用客数が少なく、赤字路線をいつまでも抱えたままにできない現状を考えると、残念ですが致し方ないことかもしれません。
北海道の田園風景を駆け抜ける札沼線。最後に一度乗ってみてはいかがでしょうか?