札幌の奥座敷、四季を通して美しい山間にある「定山渓温泉」。
市内中心部からもほど近い、北海道を代表する人気の温泉地です。
この定山渓温泉と、そこに至るまでのかつて存在していた旧定山渓鉄道が、「さっぽろ・ふるさと文化百選」に選定されています。
さっぽろ・ふるさと文化百選「定山坊と定山渓温泉」、「旧定山渓鉄道」
良質な温泉、湯冷めしにくく柔らかい泉質の定山渓温泉。
定山渓温泉に湧き出ている良質なお湯は無色透明なナトリウム塩化物泉で、柔らかい肌触りと癖がなく肌への刺激が少ないのが特徴です。入浴すると肌がすべすべになって、保温効果も高いため入浴後もポカポカで湯冷めしません。
その歴史は古く、1866年に岡山県出身の僧侶で北海道で布教活動を行った僧侶、美泉定山がアイヌの人々の案内で泉源と出会い、この地に湯治場を設けたことに始まります。 温泉の礎を築いた定山の功績からこの地が「定山渓」と呼ばれるようになりました。
美しい自然の渓谷、景勝地としての定山渓
温泉街がある付近には白糸の滝、湯の滝、舞鶴の瀞など、四季折々の美しい景色に出会える景勝地としても有名です。支笏洞爺国立公園内に位置するこの渓谷は夏には緑が溢れ、秋には色付いた山々に囲まれた紅葉を楽しむ絶好の紅葉狩りスポットとしても知られます。
冬の定山渓温泉もおすすめで、雪に覆われた白い渓谷を見て楽しむのはもちろんですが、寒い季節に入る雪見の露天風呂は格別です。湯冷めしない泉質は冬場の温泉旅行にも最適ですね。
そんな定山渓温泉は札幌市街地から南に26km、車だと1時間ほどの距離にあります。バスやマイカーで行くことが多い場所ですが、かつて札幌中心部と定山渓温泉を結ぶ「定山渓鉄道」があったことは知る人も少なくなってしまいました。
旧定山渓鉄道とは?
1913年に国鉄苗穂駅から定山渓までの鉄道として、定山渓温泉への観光客と木材や鉱石、石材の輸送を目的として計画され、1917年に開業。白石 – 定山渓間を1時間30分で結びました。しかし、道路事情が改善するにつて、乗客は徐々にバスやマイカーに奪われ1969年に廃線。短い歴史に幕を下ろしました。
定山渓鉄道の線路跡地にできたのが札幌市営地下鉄の南北線で、北24条駅 – 真駒内駅間で1971年に開業。南平岸駅 – 真駒内駅間の地上走行区間はかつての定山渓鉄道線の廃線跡にあたります。1972年の札幌オリンピック開催わずか1ヶ月半前の開業でした。定山渓鉄道を運営していた会社は「じょうてつバス」としてその名を現在に残しています。今も定山渓方面へたくさんの人を運び、南区では市民の足となっているバスですね。
今となっては鉄道で定山渓へ行くことは叶いませんが、定山渓で温泉に浸かりながらその温泉を開拓した先人や歴史に想いを馳せてはいかがでしょうか?