歴史の授業で学ぶ、縄文・弥生・古墳・飛鳥・・・といった時代区分。
しかし、北海道では本州での「弥生時代」に当たる時代区分はなく、その後も本州で始まった中央集権国家や武家政権の勢力も及んでいなかったことから、独自の文化が広がりました。
北海道の歴史や文化、成り立ちとアイヌ文化について振り返ってみましょう。
北海道の時代区分と文化
原始時代〜古代の北海道
⑴旧石器時代 – 狩猟・採集生活の時代
北海道に人が住み始めたのは、今からおよそ2万5千年前頃の旧石器時代といわれています。
この時代の北海道は、本州と同様に石器を使った狩猟・採集の生活を営んでいた時代で、その様子は鋭く尖らせる加工がされた黒曜石の石器にみることができます。
この黒曜石の産地として知られるのが遠軽町の白滝遺跡群で、旧石器時代の遺構が数多く残されています。
「北海道博物館」
旧石器時代から続縄文〜擦文・オホーツク文化やアイヌ民族文化まで、北海道の歴史を広く学ぶのにオススメなのが北海道博物館。
ナウマンゾウとマンモスの全身骨格が出迎えてくれる館内は、豊富な収蔵品が時代の流れに沿って展示されていたり、アイヌ文化の成立や伝統的な家屋が再現され生活の様子までを伺い知ることができる展示など盛りだくさんですよ!
- 営業時間 :
[5月〜9月]9:30 - 17:00
[10月〜4月]9:30 - 16:30
※毎週月曜日(祝日・振替休日の場合は翌平日)、年末年始(12月29日〜1月3日)休館 - 住所 : 札幌市厚別区厚別町53-2
- TEL : 011-898-0466
- 料金:一般600円/大学生・高校生300円
高校生は土曜日・こどもの日・文化の日は無料
⑵ 縄文文化 – 北の縄文
北海道で土器が使われ始めるのは1万4千年前頃といわれています。
この土器には縄紐で文様がつけられている縄文土器として知られ、北海道でも各地で発掘されています。
道内で縄文文化の時代の遺跡として有名なのは、大船遺跡や垣ノ島遺跡(いずれも函館市)やキウス周堤墓群(千歳市)、北黄金貝塚(伊達市)、入江・高砂貝塚(洞爺湖町)などがあり、いずれもユネスコ世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成遺産にもなっています。
また、旧南茅部町(現在は函館市)では1975年にジャガイモ畑から「中空土偶」が発見され、のちの2007年には国宝に指定されました。
「茅空(カックウ)」という愛称がつけられたこの土偶は3千5百年前頃の縄文時代後期後半のもので、薄く固く焼く高度な技術と優れた紋様細工に土偶造形の頂点とも評されています。
「函館市縄文文化交流センター」
函館市縄文文化交流センターは北海道で唯一の国宝「中空土偶」が常設展示されている博物館。
南茅部縄文遺跡群を中心に、市内の縄文遺跡から出土した土器や石器などの収蔵品が展示されています。
道の駅「縄文ロマン南かやべ」が併設されているので、ドライブの際にぜひ立ち寄ってみて。
- 営業時間 :
[4/1~10/31]9:00 - 17:00
[11/1~3/31]9:00 - 16:30 - 住所 : 函館市臼尻町551-1
- TEL : 0138-25-2030
- 料金:一般300円/児童・生徒・学生150円※未就学児は無料
休館日:毎週月曜(祝翌日)、最終金曜、年末年始
駐車場:あり(無料)
⑶ 続縄文文化 – 北海道には弥生時代がない?!
2千数百年前頃になると大陸から稲作と鉄器が伝わり、北九州で始まった弥生文化は本州の東北北部まで広がりました。
しかし、北海道では米作りは行われず、わずかに伝わった鉄器により狩猟・採集が発達しました。
これを、縄文文化を引き続きさらに発展した文化期として『続縄文文化』とよばれ、本州の弥生〜古墳文化に相当する1千数百年前頃まで続いたといわれています。
ゆえに、北海道には弥生時代がない、というよりも北海道には弥生文化は到達しなかったという方がより正確といえるでしょう。
「フゴッペ洞窟」
続縄文期の遺跡として知られるのが余市町にある「フゴッペ洞窟」です。
砂質凝灰岩が縄文海進による侵食で形成された洞窟内には800を超す刻画が残されていて、ガラス越しに見学することができます。
- 営業時間 : 9:00 - 16:30
※月曜日と祝祭日の翌日は休館(月曜日が祝日の場合は開館)
※12月中旬〜4月上旬は冬期閉館 - 住所 : 余市町栄町87
- TEL : 0135-22-6187
- 料金:大人300円/小中学生100円
駐車場:あり(無料)
⑷ 擦文文化とオホーツク文化 – 北海道に生まれた独自文化
1千2百年前頃になると、それまでの縄文がついた土器から本州の影響を受けた土師器に似た土器が使われるようになります。
この土器には表面を整えるために木のへらで擦った文様があることから擦文式土器といわれ、この文化期が擦文文化といわれています。
本州との交易によって伝わった鉄の道具の仕様も本格化し、人びとの生活は大きく変化していきます。
また、オホーツク海沿岸の地域では、続縄文後期から擦文文化期にかけて、それまでとは異なる文化が展開します。
サハリン(樺太)からやってきた人びとによってもたらされたこの文化は『オホーツク文化』とよばれ、共同で大規模な漁を営み、ヒグマを神聖なものとして扱う儀式を行っていたとされています。
そして、擦文文化はオホーツク文化の影響を受けながら、アイヌ文化につながっていきます。
「札幌埋蔵文化財センター」
札幌市内にある旧石器時代〜擦文文化期の遺跡の発掘調査、研究を行ってる札幌埋蔵文化財センターでは、併設されている展示スペースで出土した石器や土器などの遺物を展示していて、誰でも気軽に見学することができます。
札幌市内にもこれほど多くの遺跡があり、古くから人類の足跡が残っていることに驚く方も多いはず。
札幌市中央図書館と併設されているので、気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
- 営業時間 : 8:45 - 17:15
祝祭日、年末年始休館 - 住所 : 札幌市中央区南22条西13丁目1-1
- TEL : 011-512-5430
- 料金:無料
中世〜近世のアイヌ文化
アイヌ文化の成立
『アイヌ文化』は、擦文文化期の人びとが同時期のオホーツク文化の影響を受けながら本州との交流も経て、800年前頃に成立したといわれています。
アイヌの人びとは独自の言葉(アイヌ語)を話し、動植物などあらゆるものにカムイ(神様・魂)が宿っているという信仰を持つ民族です。
中世(鎌倉・室町時代)のアイヌ文化ではチセと呼ばれる簡素な木造家屋に住み、数軒の家により構成されるコタンを形成し、狩猟・漁労・採集・農耕を生業として生活していました。
アイヌと和人の争い
600年前頃には、北海道の渡島半島南部に本州から和人が移住し始めるようになります。
稲作ができなかった北海道では、和人はアイヌと盛んに交易を行うようになります。
そんな中、1457年に製鉄の技術を持たないアイヌ民族の青年が和人の鍛冶職人に小刀を注文し、その品質と価格についての争いから刺殺されたことをきっかけに、アイヌ民族が一斉に蜂起したのがコシャマインの戦いです。
1669年には、しばしば交換比率が不利な交易に不満を募らせたアイヌがシャクシャインの戦いとして蜂起したり、1798年には和人によって劣悪な環境での労働を強いられたアイヌの不満から起きたクナシリメナシの戦いなど、中世〜近世のアイヌは和人との争いの歴史でもありました。
現代のアイヌ文化
アイヌ文化やアイヌ民族というと、まるで大昔に存在したものだったり、今ではもう絶えてしまったものと考えてしまいがちです。
しかし、アイヌの人びとは時代ととも生活のスタイルを変え、現代では日本のほかの人びとと同じ地域の中で共に暮らしていて、アイヌにルーツを持つ人は北海道のみならず全国に多くいます。
一方で、1899年に制定された「北海道旧土人保護法」など同化政策の影響もあり、日常生活でアイヌ文化を見かけることはなく、伝統的な儀礼や舞踊など、復興や保存に向けた運動が盛んになっています。
「民族共生象徴空間 ウポポイ」
白老に誕生した『ウポポイ(民族共生象徴空間)』は、国立博物館「国立アイヌ民族博物館」とポロト湖畔に広がるフィールドミュージアムの「国立民族共生公園」からなるナショナルセンター。
さまざまな体験を通してアイヌの文化を伝え、学ぶことができます。
レストランやフードコートではアイヌの伝統料理を味わうことができたり、ホールで上演される伝統芸能、夜はプロジェクションマッピングなど一日中楽しむことができます。
- 営業時間 :
[4⽉〜7⽉中旬]平⽇9:00 - 18:00、⼟⽇祝⽇9:00 - 20:00
[7⽉下旬〜8⽉下旬]9:00 - 20:00
[9⽉上旬〜10⽉下旬]平⽇9:00 - 18:00、⼟⽇祝⽇9:00 - 20:00
[11⽉上旬〜3⽉下旬]9:00 - 17:00 - 住所 : 白老町若草町2丁目3ウポポイ
- TEL : 0144-82-3914
- 駐車場:あり(500円)
JR白老駅 北⼝から徒歩5分
札幌市アイヌ交流センター(サッポロピリカコタン)
アイヌ語で“札幌の美しい村”という意味のサッポロピリカコタン。
園内には伝統的な家屋のチセなどが当時のように再現されている「歴史の里」や、復元製作されアイヌの民具約300点が展示され手に触れることができる「展示室」があり、アイヌの生活や歴史、文化を楽しみながら学ぶことができます。
- 営業時間 : 8:45 - 22:00
(展示室と庭園は9:00 - 17:00) - 住所 : 札幌市南区小金湯27番地
- TEL : 011-596-5961
- 料金:無料(展示室観覧一般200円/高校生100/中学生以下無料