小樽運河は小樽に来たからには立ち寄りたい観光スポットですね。立ち並ぶ石造倉庫のなかに「澁澤倉庫」と大きく記された建物がひときわ目立ちます。
歴史をさかのぼると渋沢栄一は小樽の倉庫業に大きく貢献した人物です。2024年度に新1万円札の顔となり、NHKで放映中の大河ドラマ「青天を衝け」の主人公として名前が取り上げられる渋沢栄一。
小樽にどのような功績を残した人物かご紹介します。
渋沢栄一とはどんな人?簡単に解説!
近代日本経済に大きな貢献をもたらした「日本資本主義の父」
渋沢栄一は1840年埼玉で生まれ、藍玉と養蚕を家業とする裕福な環境で育ちました。幼い頃から商売のことや論語など中国古典を学ぶなど大変勉強熱心でした。勉強で得た知識や経験が後の功績に繋がったのでしょうか?何をした人かざっくりご紹介すると
- 「第一国立銀行(現在のみずほ銀行)」と呼ばれる日本で最初の銀行づくりに携わる。
- 銀行の社長(頭取)として、いくつもの会社の創業や経営を金銭面で助け指導する。
- 生涯をかけ500以上もの企業の創立に携わる。(東京海上日動火災保険、日本製紙、サッポロビールなど有名な企業ばかり!)
渋沢栄一が小樽に残した功績
渋沢栄一は小樽で倉庫業に投資していました。小樽の有名観光スポットとして知られる小樽運河、ご覧になったことがあるでしょうか?絶好の撮影ポイントである倉庫群の手前に新しい建物がありますね。
この2棟が旧澁澤倉庫です。(2020年夏から10月下旬にかけて外壁工事が行われ新しくなりました)現在は飲食店と駐車場として利用されています。
運河沿いの2棟を含め小樽には渋沢栄一が携わる倉庫が4棟、さらに渋沢栄一が設立に関わった旧第一銀行小樽支店があります。
渋沢栄一が小樽北運河に進出!
北運河にある3つの倉庫が重なったような形が特徴的な建物。小樽市民には「旧澁澤倉庫」として馴染みがあります。なぜ渋沢栄一はこの地に倉庫を建てたのでしょうか?
渋沢栄一は明治末期に小樽を訪れ、長大な防波堤や石炭の出荷施設を視察し、急激に発展する小樽北運河の姿を目の当たりにしています。
「港に出入りする船の荷を預かる倉庫が必要だ!」と確信。そこで渋沢栄一が経営する澁澤倉庫株式会社が大正4年(1915年)所有者から倉庫を購入しました。
現在も漁船やクルーザーが数多く停泊し、昔ながらの懐かしい小樽の景色が残っています。
旧澁沢倉庫の所有者「遠藤又兵衛」とは?
北運河にある旧澁澤倉庫の名として知られる建物、明治25年(1892年)海産物卸商を営む遠藤又兵衛が建てたものです。遠藤又兵衛とはニシン漁や海産物卸商で巨万の富を築いた人物です。
明治35年(1902年)建てられた遠藤又兵衛の邸宅は小樽港を見渡す高台にあり、現在も歴史的建造物として残ります。武家屋敷のような和風住宅に見えますが洋風な造りも取り入れた大豪邸!
しかし大正に入り海産物卸商は経営不振に陥り、北運河の倉庫を手放したのだとか。そこで株式会社澁澤倉庫が購入しました。
旧澁澤倉庫が建つ「北運河」とは
先ほどから「北運河」という言葉が出てきますが、北運河とはどこのことでしょうか?
明確な基準はありませんが、一般的には北海製缶第3倉庫より北側とされています。小樽運河は全長1140メートルで幅は20メートルあります。
しかし北運河は当時のまま幅40メートルです。
写真を見比べて違いがわかるでしょうか?
北運河の衰退、観光としての小樽運河の発展
大正末期から昭和初期にかけて小樽港は最も賑わい、北運河が荷物を船から出し入れする拠点でした。
当時の賑わいを表すパネルが小樽都通り商店街にあります。多くの荷物を乗せた艀(はしけ*船幅が広く平底の小舟)が沖と陸を頻繁に行き来し、旧澁澤倉庫をはじめ多くの倉庫に荷物を運びました。
しかし世界の港湾では、艀(はしけ)を使わずに大型船が直接接岸する「埠頭方式」が主流となり北運河は役割を終えました。そして昭和61年(1986年)に小樽運河の一部埋め立てを行い、散策路やガス灯が整備され現在の姿になりました。
旧澁澤倉庫を活かしたレトロなカフェ&バー
旧澁澤倉庫は現在カフェ(プレスカフェ)とライブシアター&バー(ゴールドストーン)として再利用されています。プレスカフェは元倉庫を利用しているため、天井が高く開放感ある造りです。フード・スイーツ・ドリンクなど豊富なメニュー、北運河散策のひと休みに利用できますね。
ゴールドストーンは多くのライブが実施され最大収容人数500人! 併設しているバーでは小樽海の幸やワイン・カクテル・ビールなどがいただけます。夜は窓越しに北運河のガス灯を眺めながらディナーも素敵ですよ。
小樽に功績を残した渋沢栄一をご紹介しました。今回スポットをあてた北運河は、おそらく皆さんが想像する賑やかな小樽運河から少し離れたエリアにあります。北運河まで足を延ばして小樽の歴史を感じるのもいいですね。