豊かな自然と共存する北海道。

私たちが暮らす町は、多くの野生動物が住処とする自然に隣接し、時にその境界線があやふやになってしまうことがあります。

近年では、人里や市街地に姿を現すヒグマの目撃情報や、農作物の被害を報道でもよく目にするようになりました。

北海道にすむヒグマと、最新の目撃情報について、まとめてみました。

2019年 ヒグマ出没・目撃情報まとめ。ヒグマとは?

注意!主なヒグマ出没情報

■クマの目撃情報があると付近が立ち入り禁止になることも。決して立ち入ったりせず、安易なクマとの遭遇は避けよう。
2019年8月6日〜札幌市南区藤野で連日ヒグマが出没

全国ニュースにもなるほど大きな話題になっている、札幌市南区藤野のヒグマ目撃情報。

日中に堂々と住宅街を歩き、庭で果樹を荒らし、パトカーに行き先を阻まれながらも動じることがない熊の様子が撮影され、連日テレビで放送されていますね。

南区は札幌の南に広がる支笏洞爺国立公園につながる山々や森と隣接する、自然豊かな地域。今回ヒグマが現れている藤野(ふじの)という地区は、その山々との境界にある住宅街です。

藤野は簾舞(みすまい)と共に、毎年ヒグマの目撃情報がある地区ですね。

連日現れるヒグマは同じ個体と思われ、札幌市は箱わなの設置をはじめましたが、まだ捕獲には至っていない様子です。

2019年5月16日 札幌市南区真駒内公園1五輪通付近

なんと、今年も札幌の真駒内公園でヒグマの目撃情報がありました。目撃されたのは、真駒内公園を南北に分ける五輪通り付近です。同日には公園東側、真駒内川に掛かる柏橋近辺でも目撃情報があった他、翌日には真駒内川付近で、翌々日には公園南部でもヒグマのフンが見つかっています。

昨年も真駒内公園でクマの目撃情報があり、大きなニュースになりましたね。真駒内公園と言えば、豊かな自然が残る都市公園として多くの市民で賑わう場所です。近隣には小学校もあり、一斉下校の対応が取られたということです。

2019年4月18日 札幌市南区石山

札幌市南区は、ヒグマが住処とする藻岩山や豊かな自然林、原生林が残る支笏洞爺国立公園に隣接しています。毎年、石山や常盤、藤野、簾舞、豊滝は多くの目撃情報があるエリア。今年もこの日以降、連日の様に目撃情報が伝えられています。

2019年4月8日 札幌市南区 藻岩山

藻岩山 自然歩道「藻岩山ルート」(T6分岐点から旭山記念公園入口に向かって約500mの地点)でヒグマを目撃情報がありました。

雪解けを迎えた札幌、雪も少なくなり藻岩山へ入山する登山客も増えてくる時期ですが、ヒグマも冬眠から目覚め行動を始める時期です。春のこの時期はヒグマの目撃情報や被害が増えやすい時期です。登山などで入山する際には十分に気をつけたいですね。

北海道の野生動物と、街

北海道には多くの野生動物が生息しています。

中〜大型の哺乳類としては、キタキツネやエゾシカ、ヒグマが有名ですね。これらはいずれも日本では北海道にしか生息していない動物たちです。

北海道を代表するマスコット的な存在として、観光客をはじめ道民にも親しまれていますね。

キタキツネやエゾシカは、観光地になっている道内各地の景勝地にも度々姿を現し、観光客の目を楽しませているだけでなく、キタキツネに至っては大都市の札幌であっても住宅地や街中で目にすることがあるくらい身近な存在です。

動物たちの住処である山中や森林地帯は、森を拓き住み始めた人間の街と隣接し、その境界線は時にあやふやになってしまうのです。

野生動物との出会いは、私たちをほっこりさせてくれるだけでなく、農作物などが被害にあったり、特にヒグマに至っては人身被害につながることも懸念されています。

北海道に暮らしているヒグマとは?

■日本に棲む陸生動物で最大のヒグマ。川に遡上してくるサケやマスを捕食することも。

ヒグマはヨーロッパからアジアにかけてのユーラシア大陸、北アメリカ大陸と幅広く生息しているクマで、北海道に住むのはエゾヒグマというヒグマの亜種。

日本にいる陸生動物では最大で、オスの体長は240cm、体重は500kgを超える個体も確認されています。

食性は雑食で、草木や木の実を好み、川魚を食べることもあります。知床に生息するヒグマがサケを捕食する様子などはテレビでも放映され、有名ですね。

冬は巣穴で冬ごもりし、メスはこの期間に出産をします。春、冬眠から目覚めると、やわらかい草木を求め行動を始めます。夏には繁殖期を迎え、秋は冬眠に備え、たくさんの食物を食べ栄養を蓄えます。

寿命は20~30年と言われ、4歳を越えると繁殖が可能になり、2〜3年の性周期で繁殖します。一度の出産で2〜3匹の子供が産み、一生のうち5~6回の繁殖回数があると言われます。

山で暮らすクマがなぜ人里・市街地に?

北海道には、およそ2,000〜3,000頭のヒグマが生息していると言われています。

クマは臆病な性格といわれ、普段は人と出会うことがない様、人里から距離をとるようにひっそりと暮らしています。

しかし、近年では市街地での目撃情報は増加傾向にあり、農作物などへの被害を報道でもよく目にする様になりました。

人里や市街地への出没が増えている理由については様々なことが考えられていますが、①人による開発や伐採で環境が変化していることや、②年によってはミズナラやコナラ、ドングリ、クルミなどヒグマが好む植物の凶作、③それにより人里に食べ物を求めに来ること原因として考えらえている他、④里山の中山間地問題や、⑤キャンプなどのレジャーで食べ物の置き去り、ゴミ出しなど人間のマナーが原因になることもあります。

クマとの共存、答えの出ない議論。

2018年7月、島牧村でヒグマの目撃情報が相次ぎ、断続的に現れるヒグマにより漁師の作業小屋が壊されたり、生ごみが荒らされ、窓ガラスが割られるなどの被害が続出しました。全国ニュースにもなり、まだ記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。

住民は不安な日々を過ごし、仕掛けられた罠でようやくヒグマ捕獲されたのは2か月後のことでした。その後、複数のヒグマが駆除されたそうです。

2012年には、札幌市内の民家近くにヒグマが現れました。場所は札幌中心部からも近い藻岩山の山麓です。住宅街から20〜30mの樹林地で採食していたそうです。

このクマは、最初に目撃された翌日も姿を現し、前日同様に採食をしているところハンターによってライフル銃で駆除されました。

近隣住宅に被害はありませんでしたが、クマに人を恐れるような気配がなく、人を襲う危険があるため、というものです。

後に、このクマはまだ子グマで、民家から近いとはいえクマが本来住んでいる藻岩山山麓であること、あくまで樹林内での採食で住宅地に出て来た様子も、出て来る様子もなかったことから大きな議論となりました。

この2つの事象は、私たちの北海道の町が、クマたちの住処と隣接し、曖昧な境界線の中で共存をしていくことの難しさを教えてくれます。簡単に見つかる答えではありませんが、ひとりひとりが真剣に考えていくことの必要性に気付かせてくれるのです。