北海道には、富士山とそっくりな羊蹄山という山があるのを知っていますか?
標高1,898mの独立峰のこの山は北海道の中心部にあたる道央にあり、この地域のシンボルにもなっているだけでなく、その美しい山容から蝦夷富士の愛称でも親しまれています。
羊蹄山ってどんな山?その特徴と名前の由来についてまとめてみました!
富士山にそっくりで蝦夷富士(えぞふじ)とも呼ばれる北海道のシンボル・羊蹄山
北海道の中央部にある『羊蹄山(ようていざん)』は、日本百名山のひとつにも数えられている北海道を代表する山です。
ニセコ町・倶知安町・喜茂別町・真狩村・京極町に跨ってそびえ、5つのまちの境界線は山頂で交わります。
標高1,898mの独立峰で、その美しい円錐形の山容は富士山によく似ていて、北海道では蝦夷富士の愛称で親しまれています。
羊蹄山とは?その特徴を3つのポイントで深掘り解説!
全国に数ある郷土富士の中でも本家・富士山に一際よく似ている羊蹄山。
写真で見ると富士山と見間違える人も多いそう!そんな羊蹄山の特徴を3つのポイントで深掘りしてまとめてみました。
羊蹄山は活火山!今後噴火することはある?!
『羊蹄山』は日本火山予知連絡会による活動度でランクCに指定されている活火山です。
円錐形の美しい山容の羊蹄山は、ほぼ同じ場所の火口から複数回の噴火を繰り返し溶岩や火山砕屑物などが積み重なることで形成された成層火山で、富士山もこれにあたります。
羊蹄山の噴火活動の歴史は約5万年前に始まり、幾度かの休止期を挟んで3回の大きな噴火があったと考えられています。
最後の噴火は約2,500年前の北山火口群の小規模な噴火で、その後の有史以降に火山活動はなく、現在では山頂からの噴気も見られず休止期にあるとされ、近い将来の噴火の危険性は低いといわれています。
しかし、数千年間の休止期を挟んで再び活動を始める火山もあり、羊蹄山もいつか再び活動を始めることも否定はできません。
羊蹄山の本当の標高は何m?
『羊蹄山』の標高は1,898mです。
しかし、一般的に山頂に設置されることが多い一等三角点が羊蹄山にも置かれていますが、その場所は山頂よりも少し低い1,892.7mの場所にあり、ここは旧山頂と呼ばれています。
本当の山頂(新山頂)は、直径700mの父釜と呼ばれる大きな火口を囲む外輪の登山道を旧山頂から時計回りに200mほど進んだ場所にあります。
また、羊蹄山には三等三角点もあって、これは母釜と呼ばれる小さい火口の外輪にあり北山と呼ばれている1,843.7mの小高いピークに置かれています。ひとつの山に三角点が2箇所も置かれているのは珍しいことです。
ちなみに富士山の標高は日本一高い3,776mですので、1,898mの羊蹄山は姿こそ似ているものの、その高さは富士山の半分ほどになります。
羊蹄山の名前の由来は?
『羊蹄山』は「蝦夷富士」の愛称のほか、「マチネシリ」や「マッカリヌプリ」「真狩山/岳(まっかりやま/だけ)」「後方羊蹄山(しりべしやま、こうほうようていざん)」など様々な名称で呼ばれてきました。
この山の呼び名の変容は歴史が深く、さらに謎も多くて複雑です。
アイヌの人々はもともとこの山のことを「マッカリヌプリ」と呼んでいたようです。これはマㇰ・カリ・ペッ(後ろに・まわる・川)という現在の真狩川の水源があるヌプリ(山)を意味していて、「真狩岳」や「真狩山」の呼び名もこれに由来し、羊蹄山に置かれている一等三角点の点名にも「真狩岳」が用いられています。
また、アイヌの人々は羊蹄山とその南東にある尻別岳を夫婦に見立てて、羊蹄山を「マチネ・シㇼ(女の・山)」、尻別岳を「ピンネ・シㇼ(男の・山)」とも呼んでいたようです。この尻別岳の語源になっているのが、この山の麓を流れアイヌの人々に「シㇼ・ペッ(山の・川)」と呼ばれていた現在の尻別川とその流域の地域です。
そして、日本書紀に記されている飛鳥時代に蝦夷討伐のため北海道にやってきた武将・阿倍比羅夫が政所を置いたとされる「後方羊蹄(しりべし)」こそ「シㇼ・ペッ」と呼ばれるこの地であると考えた幕末の探検家・松浦武四郎によって、すでに「マッカリヌプリ」と呼ばれていたこの山が「後方羊蹄山(しりべしやま)」と名づけられ、後にこの呼び名は明治政府によっても正式な名称として用いられるようになりました。
しかし、「後方羊蹄山(しりべしやま)」は難読であったため「後方羊蹄山(こうほうようていざん)」とも呼ばれるようになり、さらに地元・倶知安町の要請によって「後方(こうほう)」を省略した「羊蹄山(ようていざん)」という名称に変更され、現在の地形図でもこの呼び名が用いられるようになりました。
他にもまだある!北海道の郷土富士
北海道には羊蹄山以外にも、ご当地富士がたくさんあります。
ここではその代表的な北海道の郷土富士を3つご紹介いたします!
利尻富士 – 利尻山
利尻富士の愛称で親しまれている標高1,721mの利尻山は、北海道の北部にある離島・利尻島に位置する独立峰で、日本百名山のひとつに数えられています。
北海道本土からはまるで日本海に浮かぶようにそびえて見えるその姿はきれいな円錐型をしていて、これは富士山や羊蹄山と同じ成層火山がなす山容の特徴です。
利尻山の恩恵によって、島は豊かな磯場と漁場に恵まれ、ウニや利尻昆布などが特産品になっているほか、たくさんの高山植物が登山者の目を楽しませる北海道の離島観光の人気エリアになっています。
知床富士 – 羅臼岳
知床富士の愛称で親しまれる羅臼岳は、知床半島の中央部にある知床火山群の主峰で、円錐型の山容をなす成層火山です。
標高は1,661mで、この山を含む知床半島の中心部から先端までは1964年に知床国立公園として指定され、2005年には世界遺産にも登録されています。
知床半島を横断する峠道の頂上付近にある駐車場からは、その勇姿を間近に見ることができる絶景のビューポイントとして、知床観光の人気スポットになっています。
渡島富士 – 駒ヶ岳
渡島富士の愛称で親しまれている駒ヶ岳は、北海道の南部・渡島半島にある標高1,131mの活火山で、全国にある同名の山と区別するために北海道駒ヶ岳や渡島駒ヶ岳、蝦夷駒ヶ岳とも呼ばれています。
富士山や他の多くの郷土富士と同じく成層火山の駒ヶ岳ですが、現在の姿はあまり富士山と似てないように見えます。
これは、1640年にあった大噴火によって山頂部が大きく崩壊し、現在のような2つの峰をもつ山容を形作ったものといわれ、かつては標高1,700mほどの円錐型をしていたとされています。
この時の岩屑なだれが川を堰き止めてできたものが山麓にある大沼で、この一帯は1958年に大沼国定公園に指定され現在では函館・道南観光の景勝地として人気になっています。