札幌駅から徒歩10分、そこには札幌中心部にあるとは思えないほど緑豊かな森が広がる。
北海道大学の施設として植物学の教育・研究を目的に設置されたこの「北大植物園」とそこにある「旧札幌博物館」「旧バチュラー邸」が、さっぽろ・ふるさと文化百選に選定されています。
開拓前の原生林だった札幌を想像させる、ハルニレの巨木と北海道の自生植物
クラーク博士の提案により整備された、広く一般公開される植物学の教育・研究の場
北大植物園は、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター耕地圏ステーション植物園が正式名称。札幌駅北側の北大キャンパスとは800mほど離れた場所にあるが、正真正銘の大学関連施設として、植物学の教育・研究に活かされているだけでなく、絶滅危惧種の保存に努めている。
園内は広く一般公開されていて、市民や観光客の姿も多い。
この植物園は、北大の全身である札幌農学校の初代教頭、クラーク博士の「植物学の教育には植物園がひつようである」という提案によりはじまり、のちの1886(明治19)年に開園しました。
園内には、開拓前の札幌がうっそうとした森であったことを思い起こすハルニレの大木やエゾヤマザクラなど北海道特有の木々が立ち、地形や植生に手を加えず残された自然林もある。
旧札幌博物場
園内にある博物館本館は、かつて北海道開拓使が札幌博物場として建てたもので、のちに札幌農学校に移された。現在は北海道に生息するヒグマやエゾシカをはじめ、絶滅したエゾオオカミやニホンカワウソの剥製を見ることができる博物館として公開されている。
北海道大学の教員が訓練に関り、日本で初めての南極観測で活躍した樺太犬「タロ」の剥製は、人気展示のひとつになっている。
バシリカ型のキリスト教教会堂をなぞった外観のこの洋風建築物は、建築以来の機能を変えていない点で日本で最も古い博物館として、重要文化財にも指定されています。
旧バチュラー邸
もともと豊平川の扇状地だった札幌の土地。
札幌の中心部は扇端にあたり、先住民族のアイヌではメムと呼ばれる湧き水が豊富な泉が多く存在しました。
イギリス人宣教師のジョン・バチェラー博士は、アイヌの教育と研究に取り組んだ、アイヌ研究の父と呼ばれています。もともとは植物園近くにあった博士の自邸のこの建物は、当時では現代的な西洋建造物でした。
1962年に植物園に移築され、博士の遺品も一緒に保管されていますが、現在は内部は非公開となっています。2000年に登録有形文化財に指定されました。
北海道の歴史も感じながら、観光地としての魅力も溢れる植物園
植物園内には、姉妹提携を結んでいるカナダのブリティッシュコロンビア大学の植物園から導入したものを中心に、北アメリカ産の高山植物約150種を植栽展示されているカナディアン・ロックガーデンやバラ園は観光にも人気になっています。
5〜6月にかけて次々と美しい花を咲かせる北ローンの東側にあるライラック並木も人気。今では札幌市の木として選定されているライラックですが、宮部金吾記念館の正面左には、スミス女学校(現北星学園)の創始者サラ・クララ・スミス女史がアメリカから持参したとされる札幌最古のライラックもある。
原生林から開拓された札幌。札幌農学校とその後の歴史に想いを馳せながら、植物園でゆっくりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。