札幌市豊平区の道道453号線沿い、小高い丘にある天神山緑地。
標高85mの天神山に整備され、市民の憩いの場として親しまれる緑地です。ここに「さっぽろ・ふるさと文化百選」に選定された「平岸リンゴ園跡」のモニュメントが飾られています。
かつて、この天神山緑地の麓をはじめ、丘陵地から現在の平岸街道沿い一帯にリンゴ農園が拡がり、「平岸リンゴ」のブランドで盛んに栽培されていたことは、市民でも知る人は少ない北海道開拓時代、札幌の歴史の1ページです。
天神山の麓、平岸街道沿い一帯に広がっていたリンゴ農を憶う
天神山緑地の一画に設置されているモニュメント
平岸でリンゴ栽培がされるようになった始まりは1877年頃。開拓使がアメリカから輸入したリンゴの木が配布されたのが始まりです。
痩せている土地のため、農作物の収穫が見込めない平岸地区(当時、平岸村)ですが、寒冷地でもよく成長すると広まったリンゴ栽培は、後に国内有数のりんごの産地となり、平岸リンゴは日本全国へはもちろん、海外にも輸出されていたそうです。
札幌市の人口増加による宅地化と共に徐々に姿を消していった平岸リンゴですが、それを惜しむように植えられた環状通り中央分離帯のリンゴの木に、その面影を現在に残しています。
なぜ幹線道路の中央分離帯にリンゴの木が植えられているのか、不思議に思っていた方も多いのではないでしょうか。かつての平岸地区のリンゴ果樹園にちなみ、豊平区役所前から国道36号までの1.1kmの区間に63本のリンゴの木が植えられ、豊平区のシンボルになっています。毎年、初秋にはこの木に実るリンゴが収穫され、イベントなどで市民に配布されているそうです。
リンゴ倉庫を改装したカフェに天神山アートスタジオ・・・リンゴ園の今昔
この辺りには、当時のリンゴ倉庫を改装しカフェとして生まれ変わったおしゃれなお店や、リンゴにちなんだお店も多くあります。
さて、そんな歴史の背景をもつ天神山緑地は、標高89mの札幌市街や藻岩山が望める小さな山にある緑地です。起伏が多いので、ちょっとした運動がてらのお散歩にもおすすめです。ベンチが多く設置しているので、お休みの日をゆっくり過ごすにも良さそう。
近年では「さっぽろ天神山アートスタジオ」がオープン。ここはアーティストが中長期の滞在をしながら創作活動を行えるスタジオ(アーティスト・イン・レジデンス)や交流スタジオなどがあり、文化芸術の拠点となっている。また、無料休憩所としても一部施設が開放されている他、札幌や北海道に関する書籍が揃う図書スペースもあるので、お散歩の時には気軽に立ち寄ってみては。