国際オリンピック委員会(IOC)が突如、東京オリンピックでの男女のマラソンと競歩を、東京から札幌への開催へ変更を検討していると発表がありました。

まさかのIOCからのこの提案。

札幌では歓迎するムードもある一方、「本当に札幌になるの?」という懐疑的な声とともに、もし札幌の開催となれば、「日程やコース、スタジアムはどうなるの?」という心配の声も上がっていますね。

東京オリンピックの「マラソン・競歩の札幌開催」について、現地・札幌からまとめてみました!

東京オリンピック、マラソン・競歩の札幌開催はどうなる?!

開催まで10ヶ月を切ったタイミング、IOCから突然の提案

東京オリンピックの開催まで、あと282日と迫った10月16日、国際オリンピック委員会(IOC)が「東京オリンピックのマラソンと競歩を東京から札幌に移す案」を突如、発表しました。

これは、酷暑が予想される8月の東京で、選手たちの「健康面」「ベストなパフォーマンスを発揮するため」への懸念を緩和させるための案とされています。

札幌市民は歓迎ムード!でも、本当に札幌になるの?

現地・札幌での反応は?

この発表を受けて、札幌市の秋元克広市長は、

「札幌市としましては大変ありがたいことと捉えたい。アスリートファーストの視点での検討とのことですので、最大限尊重すべきと考えます。」

ーーとコメントしています。また、札幌陸上競技協会の志田幸雄会長も、

「札幌では北海道マラソンなどを開催してきた実績もある。東京オリンピックという大きな大会の中で陸上の種目が札幌で開催されるのであれば、非常に喜ばしいことであり、全面的に協力したい」

ーーと歓迎ムード。

札幌市民も、「嬉しい!」「マラソンが札幌で開催されるならぜひ見たい!」といった歓迎する声が多いですね!

IOCの発表では、『1972年の冬季オリンピックの開催都市である札幌にマラソンと競歩を変更することを計画している』とあります。

そう、札幌はかつて冬季オリンピックの開催経験があります!

東京オリンピックではサッカーの試合が札幌ドームで開催される事がすでに決定しますが、それに加えてマラソン・競歩まで開催されるとなれば、本当、すごい!

本当に札幌で開催されるの?開催できるの?懸念事項や課題も

トーマス・バッハ会長の意向が強い?

今回のIOCの提案は、トーマス・バッハ会長の意向が強く反映されているという報道があります。

IOCの発表にも、トーマス・バッハ会長のコメントとして、

「今回の提案は、選手が最高の結果を出せることを可能にする。実行されることを楽しみにしている」

ーーと記されています。

これは、9月下旬から10月上旬にかけて中東ドーハで開催された『世界陸上』のマラソンや競歩で、暑さ対策で午後11時30分~午前0時の真夜中のスタートになったにもかかわらず、気温30度超、湿度70%以上の酷暑で、4割を超える選手が途中棄権したことが背景にあるとされています。

札幌開催には懸念事項、課題も

■オリンピックのマラソンが札幌で開催となれば嬉しい反面、課題も多そうですね。

でも、東京オリンピックのマラソン・競歩を札幌で開催する、なんていう事が本当に可能なのでしょうか?

東京での開催にあたってのこれまでの様々な準備が無駄になってしまう可能性がありますし、同様の準備が今から札幌でできるのか?という懸念もあります。

⑴ 事前の準備が無駄になってしまう?

東京オリンピックでは当初から暑さ懸念があり、東京都はマラソン・競歩のコースになる都道に、およそ300億円もかけて遮熱性舗装を整備してきました。

また、オリンピック開催期間中には交通混雑緩和に向けて、時差出勤やテレワークの試み、休暇取得の推奨、物流の抑制などの「スムーズビズ」の社会実験なども実施されてきましたね。

これはマラソン・競歩に限ったことではありませんが、大規模な交通規制があるこれら競技の開催日を想定しての試みでもありました。

全てが無駄になってしまう訳ではありませんが、意味が半減してしまいそうです。

⑵ MGCでの代表選考、自国開催メリットがなくなってしまう?

9月15日には、東京オリンピックの男女マラソン日本代表決定戦である「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が、東京オリンピック本番とほぼ同じコースで行われました。

新国立競技場(オリンピックスタジアム)がまだ完成していないため、スタート・フィニッシュ地点こそ異なりますが、選手にとっては自国開催のオリンピックコースを一足先に走ることができ、十分なシミュレーションもできたはずですが、そのメリットもなくなってしまいますね。

また、運営面においてもMGCは重要な事前シミュレーションでもありました。

⑶ オリンピック開催地のアピールができない?!

マラソンといえば、オリンピック競技の花形。

マラソンや競歩は競技時間中、世界中に生中継され多くの人たちが視聴します。

東京オリンピックのコースも「浅草・雷門や銀座、東京タワー、皇居」など、まさに開催地、日本の首都・東京を世界中にアピールできるコースですよね。

もし札幌となれば、マラソンがオリンピック開催都市で実施されないのは1896年アテネ五輪からの近代五輪32回目で初めてのこと。

開催地・東京としては、なんとしてもマラソンの開催は東京で実施したいと考えるのも当然のことです。

⑷ 販売済みのチケットはどうなるの?!

オリンピックのチケットはすでに一部が販売済み。

マラソン・競歩についても「一次抽選販売」、「一次抽選の追加抽選販売」がすでに終わっています。

東京でマラソン・競歩の観戦しようと、日本中、世界中ですでにチケットを購入した方がいるはず。さらに、東京近郊外であれば、航空券や宿泊先の手配も済ませている方も多いかもしれませんね。

もし札幌での開催となれば、チケットは今後の公式リセールサービスが利用できたとしても、航空券、宿泊先のキャンセルに困ってしまうことがあるかもしれません。

何より、東京の観光も一緒に楽しみにしていた方にとっては、とても残念なことですよね。

札幌はオリンピックのマラソン・競歩を実施することが可能なのか?

札幌でマラソン・競歩を開催するということは、実際、可能なのでしょうか?

かつて1972年に冬季オリンピックの開催を経験した事がある札幌ですが、それもすでに50年近く前のこと。

夏と冬のオリンピックでは全く異なるでしょうし、当時と今のオリンピックでは開催規模や運営方法も大きく異なっているのではないでしょうか。

⑴ 北海道マラソン、札幌マラソンなどの運営ノウハウは活きる?

札幌では、「北海道マラソン」「札幌マラソン」という大きなマラソン大会が毎年、開催されています。

「北海道マラソン」は、札幌中心部が発着のフルマラソンで、17,000名のエントリーがある国内最大級のマラソン大会。毎年夏に開催され、オリンピックや世界陸上への選考レースとしても位置付けられています。

一方の「札幌マラソン」は毎年秋に開催される市民マラソン大会(ハーフ)。ゴール地点は札幌オリンピック開会式・スピードスケート競技場として建てられた「真駒内屋外競技場(真駒内セキスイハイムスタジアム)」が利用されています。

オリンピックでのマラソン競技の参加人数は百数十名の規模なので、これらの運営ノウハウは十分に活かせるかもしれませんね!

ただし、通常オリンピックスタジアムがスタート・フィニッシュ地点になるオリンピックのマラソンとなれば、コースは大幅に変わる可能性がありますね。

コース周辺の交通規制やそれに伴う影響のシミュレーションには、そのノウハウを活用することは難しいかもしれません。

⑵ 札幌はこれから雪が積もる!準備期間が短い!

札幌はまもなく雪が降り、そして積もります。

オリンピックに向けてのテスト走行、コースの整備が必要になっても、4月上旬の雪解けを待たなければいけません。

そこからオリンピックが開幕する7月24日までは3ヶ月半、マラソン・競歩の開催日までも4ヶ月ありませんね。

東京で開催されたMGCのように、オリンピック本番同様の大会を開催するのは日程的に難しそうですし、北海道マラソンも例年8月末ごろなので、運営面での事前シミュレーションは困難ですね。

準備期間として、決して十分とは言えなそうです。

⑶ 意外と暑い、8月の札幌

今回のIOCの提案では、「オリンピック期間中の気温が札幌では東京に比べて5度から6度低い」ことをあげています。

でも、今年の札幌は暑かった!

7/29〜8/7と最高気温が連日30℃超え、観測史上初めて3日連続の熱帯夜も経験しましたね。日によっては東京よりも気温が高い日もありました。

ただ、湿度は東京よりも低め。ムシムシとする東京よりは過ごしやすく感じるので、持久力が必要なマラソンや競歩などには良いかもしれません。

札幌で開催するなら、日程・コース・スタジアムはどうなる?!

スタート・フィニッシュは札幌ドームが有力?

■有力なのは「札幌ドーム」?ここがマラソンのスタート・フィニッシュ地点になるかも。

オリンピックでのマラソンといえば、スタート・フィニッシュ地点はオリンピックスタジアムというのが定番です。

東京でも、新国立競技場(オリンピックスタジアム)がスタート・フィニッシュ地点のコースとして決定しています。

札幌で考えられる施設は複数ありますが、動員キャパシティ順に見ていくと、

  • つどーむ:1,200名
  • きたえーる:8,000名
  • 真駒内屋外競技場:17,000名
  • 札幌ドーム:53,000名
  • (参考)旧国立競技場:48,000名
  • (参考)新国立競技場:68,000名

などがあります。

「つどーむ」「きたえーる」の数千人規模での開催は事実上不可能ですし、かつて札幌オリンピックの開会式が行われた「真駒内屋外競技場」でも現在のオリンピックの規模で考えるとかなり小さいですし、施設の老朽化も気になります。

唯一、考えられるのは『札幌ドーム』ではないでしょうか。

コースはどうなる?札幌の魅力を世界に発信するならココ!

■札幌の魅力をアピールするコースなら『大通公園』『さっぽろテレビ塔』は欠かせませんね!

『札幌ドーム』がスタート・フィニッシュとなると、北海道マラソンや札幌マラソンとはコースが随分変わりそうです。

札幌の街をアピールするコースとなると、『札幌中心部』は通過することになりそうですね。

  • 大通公園
  • さっぽろテレビ塔
  • 時計台
  • 駅前通り
  • 赤れんが庁舎
  • 北海道大学

はかなり有力では?!

北海道マラソンでは、「新川通」を通り折り返すコースですが、これは札幌のアピールにはちょっと弱いかも?

『中島公園』の周辺は良いですが、『すすきのネオン街』が全世界に生中継されるのはちょっと憚られますよね(笑

他にも、

  • 旭ヶ丘周辺
  • 円山公園周辺
  • 羊ヶ丘

も魅力的ですが、アップダウンが多いコースになりそうなので難しいでしょうか?

国際陸上競技連盟のセバスチャン・コー会長は、「われわれは大会運営者とともに、マラソンと競歩の最高のコースを作るために尽力する」とコメントしてくれていますので、ぜひ期待したいですね!

日程は東京開催と同日にならない可能性も

競歩は、男子20kmが7月31日(金)、女子20kmが8月7日(金)、男子50kmが8月8日(土)に開催予定。

マラソンは、女子が8月2日(日)と、男子が8月9日(日)のオリンピック期間の最終日に開催予定です。

8月といえばプロ野球ペナントレースやJリーグも真っ最中。

『札幌ドーム』をホームグラウンドにする「北海道日本ハムファイターズ」は、2019年8月にも札幌ドーム6連戦がありましたし、同じくホームスタジアムにしている「北海道コンサドーレ札幌」も8月にもホーム戦がありますね。

これらの日程を全て調整させるとなると、ちょっと大変そうです。

なにより、オリンピック競技の花形であるマラソンは、開催期間の終盤、日曜日の開催です。

中でも男子マラソンはオリンピック最終日の開催で、まさしくフィナーレを飾る競技。同日には新国立競技場では閉会式も予定されています。オリンピック最終日に、開催都市と離れた都市で花形の競技が開催されるかどうかは、微妙なところではないでしょうか。