かつて、北海道は11の国に分かれていたのを知っていますか?
その国境いにあった峠道は、今なお人や物の往来を支えている重要なルートとして残っていて、その名称にも旧国名の名残を見つけることができます。
古の国境いにある峠とその名称について、まとめてみました!
旧国名が由来になっている北海道の峠と国境(くにざかい)とは?
北海道に設置された11国86郡の行政区分
明治2年、戊辰戦争が終わり開拓使が置かれると、かつて蝦夷地と呼ばれていた北の大地は「北海道」と名付けられ、同時に11の令制国(律令国)と86の郡という行政区域が設置されました。
この「国」には、渡島国・後志国・胆振国・石狩国・天塩国・北見国・日高国・十勝国・釧路国・根室国・千島国の11ヵ国がありました。
今でも振興局(旧支庁)などその地域を表す地名や市町の名前として残っているので、馴染み深い名称が多いですよね。
現在では「国」という行政区域はその機能を失いましたが、「郡」は住所表記などで今でも使われています。
険しい山超えの国境の峠道
北海道にあった「国」という行政区域の国境(くにざかい)は、ほとんどが大きな山脈・山地の尾根筋となっています。
例えば、石狩国と十勝国は「大雪山」で、十勝国と日高国は「日高山脈」を隔て分けらています。
それゆえ越境の道はしばしば険しい峠道となり、交通の難所として知られる場所も少なくありません。
旧国名が残る国境の峠はどこ?全10カ所の峠まとめ!
国境にある峠で、旧国名が残っている場所は以下のとおり、全部で10カ所あります。
- 日勝峠(日高国〜十勝国)
- 狩勝峠(石狩国〜十勝国)
- 塩狩峠(天塩国〜石狩国)
- 天北峠(天塩国/下川町〜北見国/西興部村)
- 天北峠(天塩国/音威子府村〜北見国/中頓別町)
- 石北峠(石狩国〜北見国)
- 勝北峠(十勝国〜北見国)
- 根北峠(根室国〜北見国)
- 釧北峠(釧路国〜北見国)
- 釧勝峠(釧路国〜十勝国)
峠の名称には、ぞれぞれの国から旧国名の1字ずつが当てられて名付けられているのが分かりますね!
高速の開通で「日勝・石北」はもう通らない?!
北海道の数ある峠でも、特に険しい山越えの道なのが「日勝峠」と「石北峠」です。
札幌と十勝を結ぶ唯一のルートであった国道274号の「日勝峠」、そして道東・オホーツクに抜ける国道39号の「石北峠」は、いずれも多くの人や物が往来する重要な幹線ですが、冬は雪道に慣れた道民でさえ出来れば避けたい難所。
しかし、そんな国境を越える峠道も、近年では高速道路などの新しい道の整備によって状況が変わってきました。
「日勝峠」は道東自動車道の開通により、また「石北峠」は旭川紋別自動車道の開通により、それぞれ峠を通らなくても行き来ができるようになりましたね。
このように、かつての交通の難所は、より早く安全に通行できるように整備が進んでいます。
北見山地の2つの「天北峠」は鉄道ファン必見?
「天北峠」と呼ばれる峠は2カ所あり、1つは国道239号の下川町と西興部村の境界にあるもの、もう1つは国道275号の音威子府村と中頓別町の境界にあるものです。
それぞれ天塩国と北見国の国境を成す北見山地にある峠で、その名称も旧国名から由来するものですが、どちらもかつてこの地に敷かれていた鉄道にゆかりがあることでも知られています。
国道239号にある天北峠は、名寄本線の廃線跡に並走する峠道で、SLが走っていた頃は鉄道の難所だったそうです。一方、国道275号の天北峠では、現在の国道に並走するように天北線という鉄道が敷かれていました。
どちらの天北峠も廃線跡にロマンを感じる鉄道ファンなら一度は訪れたいスポットですね!
番外編:「三国峠」とは?
峠の名称に旧国名が残っていなくても、その名残を感じることができるのが「三国峠」です。
三国峠とは、読んで字の如く“三つの国”にまたがる峠道として、石狩国・十勝国・北見国を結ぶ地点にあり、付近にはそれぞれの地域につながる三叉路(国道273号と国道39号の分岐点)があります。
北海道で最も高い場所にある峠(標高:1,139m)で、展望台からは大絶景のパノラマが広がります。近くにはハンドドリップの本格コーヒーがいただける「三国峠Cafe」は観光にもおすすめですよ!