鈴木章北大名誉教授は、2010年に北海道の出身者として初めてノーベル化学賞を受賞しました。
これは北海道大学としても初めての快挙で、当時は北海道はもちろん、日本中が歓喜に沸きましたね!
その受賞理由である「クロスカップリング」について出来るだけ分かりやすく解説しながら、ご経歴やお人柄についてまとめてみました!
鈴木章北大名誉教授のノーベル化学賞受賞、受賞理由は?
2010年ノーベル化学賞で北大・道産子初の快挙!
2010年10月、この年のノーベル化学賞が鈴木章北海道大学名誉教授、根岸英一米パデュー大学特別教授、リチャード・F・ヘック米デラウェア大学名誉教授の3氏に贈られるというニュースが伝わると、瞬く間に日本中が歓喜に包まれました。
特に北海道では、鵡川村(現むかわ町)出身の道産子として初の受賞に、多くの喜びの声が上がりました。
鈴木章(すずきあきら)北海道大学名誉教授 経歴
1930年 北海道鵡川村(現むかわ町)生まれ。
苫小牧高等学校(現北海道苫小牧東高等学校)を経て北海道大学理学部へ進み、1954年に同理学部化学科を卒業。
1959年 北海道大学大学院修了、同理学部助手
1961年 同工学部合成化学科助教授
1963年 米パデュー大学博士研究員、ハーバート・ブラウン博士※に師事
1973年 北海道大学工学部応用科学科教授
1979年に今回の受賞につながる「鈴木-宮浦クロスカップリング」を発見。北海道大学では約32年に渡って教鞭を執り1994年に停年退官、同年に北海道大学名誉教授。
※1979年に「有機ホウ素化合物を用いる新しい有機合成法の開発」でノーベル化学賞受賞
工学は「実学」ーー人の役に立つのがあるべき姿
鈴木名誉教授は、ノーベル賞受賞後の大学広報誌のインタビューで、
工学部はまず「人の役に立つ」ということが第一条件。(中略)今回の受賞理由となった「クロスカップリング」は、(中略)その反応が実際の社会に役立っている。これが僕の本当に思う「実学」、工学のあるべき姿
工学研究院・工学院広報誌えんじにあRing 第386号より
ーーと話されています。
もちろん、新しい発見が実際の社会ですぐに役立つとは限らず、クロスカップリングの研究成果も当時はこれほど幅広く応用されるとは想像もできなかったかもしれません。
ですが、実学を重んじる伝統は、クラーク博士以来の北海道大学の特徴ともされています。
ストイックに研究に打ち込まれてきた鈴木章教授ですが、一方でお酒好きでフランクな人柄でも知られ、共同研究者であった宮浦憲夫北大特任教授は、研究生活の息抜きに学生たちとよくジンギスカンパーティーを楽しんでいた思い出も話されています。
2010年ノーベル化学賞、何がすごい?受賞理由を分かりやすく解説!
「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」の発明によって、2010年のノーベル化学賞を受賞した鈴木章北大名誉教授。
でもその受賞理由については、「何かすごそうだけど、よくわからない」ーーというのが正直なところでは?
化学の知識がなくても出来るだけ分かりやすく、その功績について解説します!
有機化合物をつなげる「カップリング反応」
自然界には、炭素を含んだ有機化合物と呼ばれる物質が無数に存在しています。
RーX + R’ーY → RーR‘
※クロスカップリングの一般式
この有機化合物の炭素同士をつなげる(結合させる)のがカップリング反応で、その中でも結びつけられる2つの物質がそれぞれ異なる場合を「クロスカップリング」といいます。
実用性に優れる「鈴木-宮浦クロスカップリング」
クロスカップリングには、様々な手法が開発されてきました。
パラジウムという金属を触媒(反応の進行を促進する役割)に、有機ホウ素化合物を用いたクロスカップリングを開発したのが鈴木名誉教授で、「鈴木-宮浦クロスカップリング」と呼ばれているものです。
この反応は環境に悪影響があったり毒性がある特別な溶液中で行う必要がなく、空気中でも水中でも行うことができるなど、様々な利点がある画期的なものでした。
数多くの新薬・新材料開発への貢献
「鈴木-宮浦クロスカップリング」は、その多くの利点によって様々な分野で私たちの生活に役立っています。
その毒性の低さから新しい医薬品や農薬の合成につながり、安定で取り扱いやすい工業的な利点からテレビやスマートホン、パソコンなどのディスプレイに不可欠な液晶や有機ELの材料の製造にも使われています。
人類が新しい薬や革新的な物質を手にすることができるようになった、それが「鈴木-宮浦クロスカップリング」です。
「北海道大学総合博物館」でその業績や軌跡にふれてみて
大学構内にある「北海道大学総合博物館」は、旧札幌農学校時代からの400万点にも及ぶ研究標本の一部が展示されている博物館で、鈴木名誉教授の業績を伝える常設展示もあります。
ここには、授賞式や晩餐会への招待状や記念メダルの公式レプリカ、ディプロマなど、滅多に見ることが出来ないノーベル賞関連の資料が多数展示されています。
また、受賞理由となった「鈴木-宮浦クロスカップリング」の解説パネルや、鈴木名誉教授が実際に使用していた机なども展示されているので、その偉業や軌跡もより身近に感じることができるはず。
ぜひ一度訪れてみてくださいね!
- 営業時間 : 10:00 - 17:00
- 住所 : 札幌市北区北10条西8丁目 北海道大学総合博物館
- TEL : 011-706-2658
- 入館:無料
休館日:月曜
※祝日の場合は翌平日が休館