大通公園や札幌駅で見かける壮麗な彫刻群。その姿は市民のみならず北海道を訪れる観光客の目も楽しませています。
なかでもテレビ塔を背景にした乙女たちの銅像「泉の像」を知らない人はいませんね。けれど作者が日本を代表する彫刻家ということを知る人は意外に少ないのです。
この記事では札幌生まれの日本屈指の彫刻家本郷新とその作品をご紹介します。本郷新の美しい彫刻を訪ねて身近で小さな旅をしてみませんか。
大通公園、札幌駅をはじめ、市内各所で見かける本郷新の彫刻たち
日本を代表する彫刻家本郷新とは?
本郷新は戦後の日本の具象彫刻をリードした彫刻家です。1905年札幌に生まれ、東京高等工芸学校(現千葉大学工学部)工芸図案科工芸彫刻部に入学し彫刻を学びました。卒業前後より高村光太郎に師事し、またロダンやブールデルなどの西欧の巨匠の作品に影響を受けています。
彫刻というのは公共的な広場で社会的空間の中で生きるもの、として野外彫刻の制作に熱意を傾けました。常に平和への願いを強く持ち続けた本郷新の作品はダイナミックでありながらも人の持つやさしさや逞しさを表現していて、見るものに普遍的な感動を与えます。また北海道文化賞などの賞も数多く受賞しています。
本郷新の作品は札幌市内各所に!実はあの彫刻もそうだった?
本郷新の彫刻は札幌駅や大通公園だけではありません。札幌市内の各所、私たちが日頃から親しんでいるさまざまな場所にあるんですよ。
北海道文化放送局玄関前
こちらは北海道文化放送局前にある作品です。大きく腕を広げた躍動感あふれる女性の姿が印象的ですね。それぞれ「躍進」「讃歌」というタイトルがついています。
北海道立近代美術館前庭
道立近代美術館にある「嵐の中の母子像」は、どんな苦難の中にいても必死に子供を守ろうとする母の強さが表現されています。この作品は広島市平和記念公園にも設置されているもので、本郷新の平和への思いを強く感じる作品です。
旧北海道庁前庭
旧道庁の前庭にある「北の母子像」は、1978年に本郷新が北海道文化賞を受賞した際に北海道に寄贈されたものです。晩年本郷新は母子像を大きなテーマとしておりたくさんの母子像を制作しました。
真駒内公園・五輪大橋
真駒内公園にある「雪華の像」は、札幌冬季オリンピックのモニュメントとして制作されたもので、スロープのついた台座はなんと12メートルもの高さ。その上に二体の女神が天に向かい躍動的なポーズをとっており、見上げるとその迫力に感動します。
「花束」と名付けられた二人の少女の銅像は二体一対で、真駒内の五輪大橋の両側に向かい合って設置されています。美しい真駒内の緑を背景に愛らしく佇んでいます。
本郷新の作品は道内のさまざまな場所にも!
JR苫小牧駅前
札幌からちょっと足をのばした土地にも本郷新の作品はたくさん見かけることができます。こちらはJR苫小牧駅前にある「緑の環」という作品です。
苫小牧市民会館前広場
この勇壮な作品は苫小牧市民会館前の広場にある「勇払千人同心」です。苫小牧市が開基100年の時に八王子市と姉妹都市提携を結び、その記念事業として制作されました。苫小牧市にはこのほかにも港湾公園に本郷新の作品があります。
作品は北海道だけではなく日本の各地にも
道内には稚内や函館などまだまだ本郷新の野外彫刻作品があります。日本国内でいえば遠く鹿児島まで全国各地に存在。その数はおよそ100点にものぼります。国内旅行をしたらこんなところにも本郷新の作品があったの? と驚くこともあるかもしれませんね。
本郷新の原点を知ることのできる「本郷新記念札幌彫刻美術館」
各地にある作品を堪能したらぜひ本郷新の原点に触れられる「本郷新記念札幌彫刻美術館」を訪れてみましょう。
緑豊かな宮の森の閑静な住宅街の中にあり、窓からの眺めが素晴らしく、ゆったりとした時間の流れる美しいギャラリーです。彫刻の制作過程の紹介や使用した道具、デッサンなどが多数展示され、本郷新の創作の原点に触れることができます。また美術館のまわりにもたくさんの彫刻が設置されているのでそちらも注目です。
- 営業時間 : 10:00 - 17:00
※入館は16:30まで - 住所 : 札幌市中央区宮の森4条12丁目
- TEL : 011-642-5709
- 観覧料:料金は開催中の展覧会によって異なります。公式ホームページ等でご確認ください。
定休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、年末年始、その他臨時休館日あり
駐車場:あり(無料)
銅像の原型、迫力ある石こうたち
数々の有名な彫刻作品のもとになった石こう原型が多数展示されています。ギャラリーに足を踏み入れた途端、その圧倒的な迫力に息をのみ、本郷新の作品にかけたエネルギーを体感します。
あの大通り公園の「泉の像」の石こう原型も展示されています。繊細で優美な表情を間近に見学することができるのが嬉しいですね。
本郷新の彫刻たちはこれからも北海道の歴史を見守り続ける
いかがでしたか。何気なく見ていた彫刻作品も作者を知ることで少し見方が変わったのではないでしょうか。
本郷新は彫刻の存在は同時に生命体の存在である、と述べています。広大な北海道でモニュメンタルな野外彫刻をつぎつぎ制作した本郷新は、まさにその言葉通りの美しく壮大な作品で常に日本の彫刻界を牽引してきました。
そんな北海道に流れる時間を見守り続ける本郷新の彫刻たち。ぜひ訪れてみてくださいね。