北海道には似ている読み方や紛らわしい地名が多く、言い間違ってしまったことはありませんか?

太平洋に面する港湾都市の「苫小牧」と札幌市南区にある「真駒内」もそのひとつ。

このよく似た2つの地名は、ある共通するアイヌ語から由来しているのを知っていましたか?

「苫小牧」と「真駒内」が似すぎてる!間違えてごっちゃになることない?

どちらも同じアイヌ語の「マクオマナイ」が語源だった!

■ 「苫小牧」と「真駒内」ってなんとなく似てると思ったことありませんか?

苫小牧(とまこまい)と真駒内(まこまない)は、文字にすると全然違いますが、なんとなく語感が似ていて、うっかり言い間違ってしまった経験はありませんか?

なぜこれほど似ているかというと、この2つの地名がどちらも「マク・オマ・ナイ」というアイヌ語が共通して語源になっているためなんですよ!

・オマ・ナイ [mak-oma-nay]=奥に・ある・川

ク・オマ・ナイとは、アイヌ語で「奥に・ある・川」の意味。

北海道の地名ではその土地の特徴を表すアイヌ語から由来している場合が多く、そのため似た特徴がある場所が同じ地名になったり、似た地名になっていることが多くあります。

真駒内の由来になったマク・オマ・ナイ
■ 札幌オリンピックの主会場のひとつとなった真駒内セキスイハイムアイスアリーナ

『真駒内(まこまない)』は、札幌市南区の地下鉄・南北線の終着駅があるまち。1972年に行われた札幌オリンピックのメイン会場となったまちとしても知られていますね。

開会式が行われた真駒内屋外競技場や、フィギアスケートや閉会式が行われた真駒内アイスアリーナなどの競技施設がある一帯は、オリンピック後に真駒内公園として整備され、今でもさまざまなスポーツイベントが開催されたり、緑豊かな公園内は市民の憩いの場として親しまれています。

■ 真駒内の地名の由来となり真駒内公園を流れる真駒内川

そんな『真駒内』の地名の語源となったのは、アイヌ語の「マク・オマ・ナイ(奥に・ある・川)」で、この川は「真駒内川」のことを指していると言われています。

真駒内=マ・オマ・ナイ(奥にある川)

“奥にある”とは、真駒内川が札幌の母なる川である豊平川(サト・ポロ・ペッ:乾いた大きな川の意)からみて柏丘の丘陵の陰にあることから、このように呼ばれたものと考えられています。

この真駒内川を意味するアイヌ語が、そのまま地名となったのが現在の『真駒内』なんですね。

苫小牧の由来になったト・マク・オマ・ナイ
■ 太平洋に面した港湾都市の苫小牧

『苫小牧(とまこまい)』は、北海道で有数の工業地帯を形成し、港湾都市として栄える道内で4番目に人口が多いまちです。

そんな『苫小牧』の地名の語源となったのも、真駒内と同様にアイヌ語の「マク・オマ・ナイ(奥に・ある・川)」に関係しています。

■ 苫小牧の地名の由来となった苫小牧川の河口にある苫小牧灯台

真駒内と違うのは、“沼/湖”を意味する「ト」がついて「ト・マク・オマ・ナイ」、つまり「沼の・奥に・ある・川」とされているところです。

苫小牧=ト・マ・オマ・ナイ(沼の奥にある川)

この川は樽前山の麓を水源とする苫小牧川水系の本流である現在の「苫小牧川」を指していて、川が流れる一帯はマコマイ(マオマナイ)と呼ばれていました。

そして、かつて沼(ト)があった旧樽前山神社付近の一帯がト・マコマイと呼ばれるようになり、これが現在の『苫小牧』という地名の由来になったと考えられています。

※苫小牧の地名の由来には諸説あります。

北海道に多い「川」に由来するアイヌ語地名

アイヌの人々にとって、川は生活にかかせないものであるだけでなく、カムイ(神)が宿る神聖なものでした。

それを示すように、アイヌのコタン(集落)は川沿いに多く、チセ(家屋)の一番奥にあるカムイを迎えるカムイプヤ(神窓)は川上に向けて建てられていました。

それゆえ、アイヌ語を語源とする北海道の地名には、「川」に由来するものが多く残されています。

ナイ(小さい川/沢)がつく地名
■ アイヌ語で“小さい川”を意味する「ナイ」の読みが含まれる真駒内川

アイヌでは、比較的小さな川や沢を「ナイ」と呼んでいました。

苫小牧や真駒内の他にも、「ナイ」が含まれたり、漢字で「内」があてられている地名では、そのほとんどがアイヌ語の「小さい川」に由来しています。

  • 岩内:イワウ・ナイ(硫黄の沢)
  • 歌志内:オタ・ウ・ナイ(砂のたくさんある沢)
  • 神恵内:カムイ・ナイ(神の沢)
  • 幌加内:ホカ・ナイ(後戻りする沢)
  • 稚内:ヤ・ワッカ・ナイ(冷たい飲み水の沢)

など

ぺッ(大きい川)がつく地名
■ アイヌ語で“大きい川”を意味する「ペッ(ベツ)」が含まれる標津川

アイヌには、川を意味する言葉がもうひとつあり、それが大きい川を意味する「ペッ」です。

現在の地名に「ベツ」という読みや漢字の「別」があてられているもののほとんどは、この「大きい川」に由来しています。

  • 愛別:アイ・ペッ(矢の川)
  • 芦別:ハシュ・ペッ(灌木の川)
  • 士別/標津:シ・ペッ(本当の川)
  • 本別:ポン・ペッ(小さい川)
  • 紋別/門別:モ・ペッ(静かな川)

など

北海道の地名に残されたアイヌ語

このように、北海道の地名に語源を辿ると、その土地の地形の様子や特徴など意外な発見がたくさんあります。

北海道の地図を眺めたり、北海道のドライブを楽しむとき、その地名の意味を改めて調べてみるのも楽しいですね!