ついつい見過ごしてしまう、札幌の街ナカアート。
作品たちは、街に溶け込むように佇み、札幌の景色の一部となっています。
しかし、ふと目を向け、その作品の背景を知ると、「なぜこの場所に、なぜこの作品が存在するのか。」という新鮮な疑問に答えを見つけることができるのです。
札幌の街ナカアートを再発見する散策に、出かけてみませんか?
札幌の街中に佇む、アート作品に出会いに行こう!
身近なところにあるアート作品。素通りしていませんか?
札幌の街には、数多くのアート作品があります。
札幌出身の彫刻家や、世界的な彫刻家、今なお世界を股にかけて活躍する北海道出身の彫刻家たちの作品が、私たちの身近なところにたくさんあるのです。
その街に溶け込むように存在するアート作品は、しばしば素通りされてしまうものですが、ふとした時に目を向けると新しい発見と感動を与えてくれます。
また、その作品の背景を知ると、「なぜこの場所に、なぜこの作品が存在するのか。」という疑問に答えを見つけることができるのです。
ついつい見過ごしてしまう、札幌街ナカアートを知り、新しい札幌の魅力を感じてみませんか?
札幌駅エリア
多くの人々が行き交う、札幌駅エリア。
JR札幌駅は全国でも屈指の大型駅で、1日あたり18万人が利用します。これは東京の上野駅に匹敵する数です。
再開発により2003年に開業したJRタワー内や、駅前の広場にはアート作品が多く設置されています。
妙夢 / 安田侃 作 – JR札幌駅 西コンコース
札幌駅から南口へ出る西コンコース。市民であれば一度は目にしたことがあるはずのこの作品。北海道美瑛市出身の世界的な彫刻家、安田侃による作品「妙夢(みょうむ)」です。多くの人が通るこの場所。待ち合わせ場所に使われたり、背をあずけて休む人の姿、小さい子が空洞を通り抜けようとする姿など、駅の光景に溶け込み、無意識のうちに親しみを持たれる存在になっていますね。
この作品は、イタリアのピエトラサンタ駅前や東京ミッドタウンなど、様々な場所にも設置されています。
牧歌 / 本郷新 作 – JR札幌駅 南口広場
札幌駅南口を出てすぐの広場。札幌出身の彫刻家、本郷新の「牧歌」が設置されています。1960年に設置されたこの作品は、旧駅舎であった頃から札幌駅のシンボルでした。設置当初から札幌の都市美、シンボルになるものを望まれた作者が、北海道を想起させるモティーフで作られました。手にポプラの若木、トウモロコシ、スズランを持つ若い三人の女性、左右には角笛を吹く男性の座像、もう一方は羊を抱く男性の立像の等身大の五人の群像です。
大通公園エリア
市民の憩いの場であり、多くの旅行客でも賑わう観光スポットでもある大通公園。
ここはアート作品の宝庫です。公園内にはおよそ15点、周辺も含めると30点以上の作品が点在していて、野外美術館さながら。ゆっくり観て巡るのもいいですね。
泉の像 / 本郷新 作 – 大通公園(西2丁目)
大通公園の噴水とテレビ塔を背景に、三人の踊り子が空へ手を伸ばす「泉の像」。札幌出身の彫刻家、本郷新の作品です。
札幌で最も有名な彫刻のひとつでもあるこの作品は、札幌市のイメージ写真や観光写真、ガイド誌にもたびたび登場し、札幌のシンボルになっています。
よく観てみると、三人の女性の表情、手つきは様々です。作者はこの作品を「地下から天空を支え、雲や風と遊ばせたかった。雨や雪を呼びたかった」と語っています。初夏の青空や爽やかに吹く風、冷たい雨や、しんしんと降り積もる雪・・・札幌の四季を通して永続性を感じさせる作品です。
この作品は、1959年に設置。きっかけはニッカウヰスキーの当時の会長、竹鶴政孝氏が「大通公園は素晴らしいが、彫刻が無い。何か胸像でも作りたい」という話から。そう、あの「マッサン」ですね。
ブラック・スライド・マントラ / イサム・ノグチ 作 – 大通公園(西8,9丁目)
大通公園は、西1丁目から西13丁目まで東西に伸びる公園。
その区画の間には道が走り、道が住所の変更線になっています。しかし1ヶ所だけ、住所の区切りに道が走っていない場所があるのは、知っていましたか?
現在、大通西8丁目と9丁目の間には道がありません。あるのは、世界的な彫刻家、イサム・ノグチの作品「ブラック・スライド・マントラ」です。
かつて、大通西8丁目と9丁目の間には道がありました。ノグチはすべり台でもあるこの彫刻作品を当初、9丁目の真ん中に設置するつもりでしたが、現場を見て大通西8丁目と9丁目の真ん中に、設置することを望みました。「ここに子供たちの楽しい遊び場をつくりたい」と考えたのです。
しかし、残念ながら、ノグチはこの作品が設置させる前に急逝してしまいます。
一旦は西8丁目に設置された作品ですが、のちに札幌市はノグチの遺志を尊重し、道を封鎖し、ここに大通西8丁目と9丁目をつなぐ大きな公園にすることを決断しました。その中間に作品が設置されることになったのです。このため、この作品の所在地は”大通公園西8,9丁目”とまたがって存在しているのです。
ノグチは「この作品は子どもたちのお尻によって磨かれる」と述べたそうです。
創成川公園エリア
札幌市中心部の創成川沿い。
札幌の街が作られた原点でもあるこの地に、2011年に誕生した創成川公園。ここには、北海道美唄市出身の彫刻家、安田侃の大理石を素材にした印象的な作品が多く設置されています。
生誕、生棒、天秘 / 安田侃 作 – 創成川公園(南1条、2条、3条)
散策路の中央に設置された作品「生棒(せいぼう)」は、テレビ塔を間近に見上げる創成川公園の南1条にあります。
”人生を支える杖”を表現されたこの作品。支えを必要とする人生が、高く自立するテレビ塔のふもとに存在するという対比を思うと感慨深い作品です。
他にも、生まれたばかりの新芽を表現する「生誕(せいたん)」、柔らかな曲線を描くフォルム「天秘(てんぴ)」が設置されています。
安田侃の作品は、違和感なく空間に馴染み、その多くで、大人が腰かけたり、子供が登ったり、くぐったり、触れることで親みを感じられる魅力に溢れています。
再創生 -Re Creation- / 団塚栄喜 作 – 創成川公園(北2条〜南4条)
ランドスケープデザイナー団塚栄喜による作品群、レンガを使った作品は、計13点が公園内に点在しています。
”インカルシペ”と呼ばれていた藻岩山、本来「モイワ」と呼ばれていた円山。取り違えて定着してしまった2つのモイワを方角を示した”2nd MOIWA”や、札幌の観測史上最高の積雪量を示した”TAKEKURABE”など、北海道・札幌をモティーフにした作品も多くあります。
北海道知事公館
西15,16丁目にある北海道知事公館。
1953年からさまざまな会議や行事に広く使われている知事公館。一般に公開されながら、現在でも公務で使用されています。
その広い敷地は自然豊かな庭園として市民の憩いの場となっています。
意心帰 / 安田侃 作 – 北海道知事公館 庭園
白い大理石の「意心帰(いしんき)」。
初夏の札幌、庭園の緑に囲まれ、まるで滑り台のように子供達が遊ぶ「意心帰」。
秋の紅葉の季節には、色づいた木々の中で、凛として心を落ち着かせてくれる「意心帰」。
札幌の四季が美しく変化していく知事公館の庭園の中で、静かに佇むその様子は一見の価値があります。
妙夢 / 安田侃 作 – 北海道知事公館内
一般公開されている知事公館の1階食堂に、どこかで見覚えのある作品が置かれています。安田侃作の「妙夢」、そうJR札幌駅西コンコースにある作品と同じ作品です。
駅にある巨大な作品と比較すると、こちらにあるものは小ぶりなもの。木窓に映る外の庭園の緑を背景に、静かに鎮座しています。駅の作品との対比も観るのも面白いですね。