訛りやイントネーションの違いが比較的少ない北海道ですが、話し言葉には独特な語尾が多くあるので「いかにも北海道弁」という印象を持つ方も多いのではないでしょうか。

最近では、この方言が「かわいい」「ほっこりする」と話題になることも増えてきましたね!

北海道独特の語尾の表現について、北海道民が徹底解説してみたいと思います。

北海道弁は語尾の表現が難しい!?

ちょっと難解な北海道弁「語尾の5段活用」


北海道は、東北や九州などの地域と比較して標準語とのイントネーションの違いが比較的少ないため訛りを感じにくい地域ですが、一方で独特な言い回し方がたくさんあります。

その中でも、強調・詠嘆・推量・同意・断定などの意味を添える文末の表現が複雑で北海道ならではのものが多く、これらが北海道の方言(北海道弁)と感じさせる要因のひとつになっています。

以下に、北海道独特の文末表現についてまとめてみました。

北海道弁 語尾の5段活用
北海道弁の語尾意味標準語訳
〜かい驚嘆・感嘆
疑問(⤴︎)
 〜ですか
〜さ伝達
強調
〜よ/〜だよ
〜しょ同意・推量
問(⤴︎)
 〜でしょう
〜だべ断定・叱責
疑問(⤴︎)
〜だ/〜だろ
〜だわ感嘆・詠嘆
悲観
〜だよ

北海道で話される言葉の語尾には、上記の通り主なものに「かい」「さ」「しょ」「だべ」「だわ」の5種類があり、さながら「北海道弁の語尾の5段活用」といったところ。

それぞれの意味は微妙なニュアンスの違いだったり、意味が重複していたり、曖昧な表現もありますので、道外の方が意味を正確に汲み取るのが難しい場合があるかもしれません。

一方で、北海道に移住してきた方は最初は意味が分からなくても、慣れてきたら自然と使ってた!という方も多いですね。

① 〜かい

[北海道弁の語尾の表現①]

『〜かい』

意味:驚嘆・感嘆
(標準語訳:〜ですか)

北海道弁の語尾の『〜かい』は、標準語で「〜ですか」などの驚嘆や感嘆を意味する「か」という終助詞とほとんど同義です。

    <例文>
  • まだ雪降ってるのかい(ですか)
  • 夜には止んでるんでないかーい(のではないですかー)
  • そうかい(ですか)

北海道弁の「〜かい」は物腰が柔らかい印象を与える北海道の日常会話ではとてもよく使われる言葉で、「かーい」と間を伸ばす発音になるとさらに優しい印象になります。

また、語尾を上げる発音では疑問形になります。

平昌オリンピックで銅メダル、北京オリンピックで銀メダルを獲得したカーリング女子のロコソラーレが試合中に発した「いいんでないかーい」は、かわいらしい北海道弁としても話題になりましたね。

② 〜さ

[北海道弁の語尾の表現②]

『〜さ』

意味:伝達・強調
(標準語訳:〜よ/〜だよ)

北海道弁の語尾の『〜さ』は、標準語で「〜よ」や「〜だよ」など伝達を意味する終助詞で、語尾を強く発音すると強調を意味する場合もあります。

    <例文>
  • 昨日、病院に行ったさ(たよ)
  • なしたのさ(どうしたの)
  • 雪かきで腰を痛くしたのさ(したんだよ)ー。

通常は疑問形になることはありませんが、「なしたのさ?(意味:どうしたの?)」は例外的によく使われる言葉です。

標準語の男性言葉で語尾に「〜さ」がつくと気取ったキザな感じになりますが、北海道弁ではそのような印象にはなりません。

男性はもちろん女性も頻繁に使う言葉ですが、「〜さ」を頻繁に使う北海道の女性はとてもかわいらしい印象がありますね!

ちなみに、東北弁にある「東京さ行く」のような[に]や[へ]などが意味する格助詞の「さ」は北海道で使われることはありません。

③ 〜しょ

[北海道弁の語尾の表現③]

『〜しょ』

意味:同意・推量
(標準語訳:〜でしょう)

北海道弁の語尾の『〜しょ』は、標準語で「〜でしょう」などの同意や推量を意味する助動詞の終助詞的な用法です。

    <例文>
  • 去年は花見でジンギスカンしたっしょ(でしょう)
  • 今年はまだ桜が咲いてないしょ(でしょう)
  • 来週には咲いてるしょや(でしょう)

語尾を上げる「〜しょ?」は疑問形になり、促音の小さい[っ]を加えた「〜っしょ」の発音になるとやや強調した印象になります。

また、[や]を語尾に加えた「〜しょや」になると断定や強い同意の意味になります。

かつて販売されていたインスタントラーメンの「うまいっしょ」は典型的な「〜しょ」の北海道弁で、標準語訳しすると「おいしいでしょう!」となり、促音の小さい[っ]が入ることでやや強調した同意を求める意味合いになっていて、食料品の商品名としてとても秀逸だったのではないでしょうか。

④ 〜だべ

[北海道弁の語尾の表現④]

『〜だべ』

意味:断定・叱責
(標準語訳:〜だろ)

北海道弁の語尾の『〜だべ』や『〜べ』は、もっとも有名な北海道弁の語尾ですね!

主には標準語で「〜だろ」や「〜だ」など強めな断定を意味する助動詞ですが、語尾の上げ下げなどでニュアンスは多様に変化します。

    <例文>
  • 昨日、雪降って車が埋まったべー(よー)
  • だから言ったべさ(でしょう)
  • こんなに降ると思わないべや(だろ)
  • 去年も雪多かった(だろ)
  • 今日もまた降るんだべか(だろうか)
  • そうだべな(だろうな)
  • だべー(だよなー)

語尾を強く発音したり、主に男性の「〜だべや」や女性の「〜だべさ」になると、断定に加えて叱責を意味する場合もあります。

語尾を上げると疑問形になり、「〜だべか」「〜だべな」などでは同意を求める意味合いもなります。

さらに、「だべ」の一言だけでも意味を成す場合があり、「だべ!(断定)」「だべ?⤴︎(同意)」「だべ⤵︎(悲観)」などニュアンスは様々です。

とても難しい「〜だべ/〜べ」を自在に話せるようになることが、北海道民としてのコミュニケーションでは必須になりますね!

⑤ 〜だわ

[北海道弁の語尾の表現⑤]

『〜だわ』

意味:感嘆・詠嘆
(標準語訳:〜だよ)

北海道弁の語尾の「〜だわ」は、標準語で「〜だよ」などの感嘆や詠嘆を意味する終助詞です。

    <例文>
  • 先月、孫が産まれたんだわ(だよ)
  • お祝い持って行こうと思ってたんだわ(だよ)
  • いやーそんな気を遣わなくていいんだわ(だよ)〜。

標準語では主に女性の話し言葉で「〜わ」の語尾をつけることがあり、女性的で上品な言葉使いの印象がありますが、北海道では性別を問わず使われます。

標準語の「〜わ」との違いはほとんどの場合で[んだ]が入って「形容詞+んだわ」の形になることです。例えば、「暑い」「寒い」の場合は「暑いんだわ」「寒いんだわ」のようになり、感嘆や詠嘆の意味合いが付加されます。

前述の『〜さ』と『〜だわ』いう北海道弁は標準語に直すとどちらも「〜だよ」という意味になりますが、『〜さ』が事実をそのまま伝えるニュアンスに対して『〜だわ』は感情が伴う場合に使われます。

このニュアンスの違いの使い分けも、北海道弁の少し難しいところですね。