町や村が属する「郡」という行政区画。
全国の都道府県で最も多い69もの郡がある北海道には、「上川郡」という同じ名称の郡がなんと3ヶ所もあるのを知っていましたか?!
北海道にある3つの「上川郡」はどうして同じ名前なの?
3つの異なるそれぞれの「上川郡」
北海道には「上川郡」という同じ名称の地域(郡)が、3ヶ所もあります!
① 旭川市周辺の上川郡
② 名寄・士別市周辺の上川郡
③ 十勝平野の北西部の上川郡
ーーそれぞれの上川郡は隣接しているので、同じひとつの大きな郡だと勘違いしてしまいますが、実際には独立していて異なる郡です。
どうして「上川郡」は3つもあるの?
なぜ、北海道には上川郡という同じ名称の地域が3つもあるのでしょうか?
ーーその理由は、北海道にかつてあった「国」という行政区分と「河川」に関係しています。
北海道における国郡の設置と命名
明治2年(1869年)、かつて蝦夷地と呼ばれていたこの地が「北海道」と命名されたとき、同時に「国」とそれに属する「郡」が設置されました。
この「国」には、石狩国・後志国・渡島国・胆振国・日高国・天塩国・北見国・十勝国・釧路国・根室国・千島国の11ヵ国があり、現在でも振興局(旧支庁)や市町名、地域の名称に引き継がれているので、馴染み深いものが多いですよね。
「国」の境界は、河川やその流域界(分水嶺)となる山の稜線によって決められ、北海道を代表する大河である石狩川、天塩川、そして十勝川が流れる地域は、それぞれ河川の名称がそのまま国名につけられました。
これが、石狩国・天塩国・十勝国です。
大河川の上流であることから由来する上川郡
「上川郡」というのは、読んで字の如く「川の上流」にある地域を表しています。
石狩川・天塩川・十勝川という北海道の三大河川が流れる国では、それぞれの河川の上流部にあたる地域に「上川郡」という名称が付けられました。
こうして、
① 石狩国の石狩川上流にあたる地域の上川郡
② 天塩国の天塩川上流にあたる地域の上川郡
③ 十勝国の十勝川上流にあたる地域の上川郡
ーーという3つの上川郡が存在することになったのですね。
北海道三大河川の水源となる大雪山系周辺の山々
ではなぜ、3つの上川郡はそれぞれ隣接して存在しているのでしょうか?
その理由は、河川の水源を地図で確認してみると、とてもよくわかります。
石狩川と十勝川の水源は、それぞれ大雪山国立公園内にある石狩岳と十勝岳で、天塩川の水源は、大雪山のすぐ北にある北見山地の天塩岳です。
このように、3つの川の水源となる山々が大雪山周辺に集中しているため、それぞれの上流にあたる上川郡が隣接して存在することになっているのです。
それぞれの上川郡ってどんな所?
「郡」という行政区分は、現在ではほとんどその機能は失われていますが、住所表記には今でも頻繁に使われていますね。
同名の郡が複数ある「上川郡」では、それぞれを区別するため旧国名が併記されることも多い様です。
ここでは、それぞれの上川郡がどんな所なのか、ご紹介したいと思います!
①(石狩国)上川郡
旧石狩国の上川郡は、上川総合振興局内にある以下の8町が含まれる地域です。
- 鷹栖町
- 東神楽町
- 当麻町
- 比布町
- 愛別町
- 上川町
- 東川町
- 美瑛町
大雪山の麓にあたる一帯は豊かな伏流水に恵まれ、東川町は北海道で唯一の上水道がない町としても知られています。
柱状節理の渓谷が美しく温泉や紅葉で有名な上川町の層雲峡をはじめ、パッチワークのような丘の景色の美瑛町、旭川空港がある東神楽町など、観光でも人気のエリアです!
②(天塩国)上川郡
旧天塩国の上川郡は、上川総合振興局内にある以下の3町が含まれる地域です。
- 和寒町
- 剣淵町
- 下川町
石狩国から塩狩峠を越えて天塩国に入ると、天塩川やその支流である剣淵川が流れる狭隘な名寄盆地に町が広がります。
稲作の北限地でもあるこのあたりは、北海道の中でも冬の冷え込みが特に厳しい地域です。
ウィンタースポーツが盛んな町が多く、和寒町はクロスカントリー、下川町はスキージャンプで国内トップ選手を多く輩出していることでも有名ですね!
③(十勝国)上川郡
旧十勝国の上川郡は、十勝総合振興局内にある以下の2町が含まれる地域です。
- 新得町
- 清水町
十勝平野の北西部にあたるこの地域は、十勝平野の玄関口です!
日高から日勝峠を越えて十勝平野に入ると清水町、石狩から狩勝峠を越えて十勝平野に入ると新得町となります。
北に大雪山、西に日高山脈と接するこのあたりは、冬は寒く、夏はフェーン現象の影響で30度を超える日もある寒暖差の大きい地域です。