2021年7月、日本で25件目の世界遺産となった北海道・北東北の縄文遺跡群。
世界遺産を構成する全17ヶ所の縄文遺跡のうち、北海道では千歳市や伊達市、洞爺湖町、そして函館市にある6ヶ所の縄文遺跡が構成資産となっています。
世界遺産への登録を機に、縄文ロマンを感じに北海道の遺跡めぐりに出かけてみませんか?
2021年世界遺産登録!『北海道・北東北の縄文遺跡群』まとめ
北海道にある世界遺産の縄文遺跡の全6スポット&関連施設まとめ!
ついに『北海道・北東北の縄文遺跡群』が世界遺産として正式に登録されることが決定しました!
これは日本で25件目の世界遺産で、北海道では2005年に世界遺産(自然遺産)に登録された「知床」についで2件目、文化遺産としては初めてです。
ここでは、『北海道・北東北の縄文遺跡群』として世界遺産に登録された19の構成資産のうち北海道内にある全6ヶ所の縄文遺跡と、博物館などの関連施設について、その詳細やアクセス方法についてご紹介します!
① キウス周堤墓群/千歳市
千歳市の北部にある「キウス周堤墓群」は、縄文時代の後期(およそ3200年前)に造られた集団墓。
地面に円形の竪穴を掘りその土で周囲に堤(土手)を築いている様子からこの名が付けられたこの地域独特の集団墓で、同様のものは千歳市のほか隣接する恵庭市、苫小牧市など石狩低地帯に集中して存在しています。
この特殊な地形は当初アイヌの“シャシ(砦)”として認識されていましたが、その後の研究により墓穴が発見され、縄文時代の集団墓であることが分かりました。
「キウス周堤墓群」には9つの周堤墓があり、中でも最大規模のものは2号周堤墓で、その外径は73m、周堤の高さは4.7mにもなります。
駐車場から森の中に入ると周堤墓を縫うようにウッドチップの散策路が整備されています。散策路からは周堤墓のあまりの大きさからその全景をうかがい知ることは難しいのですが、市民団体による解説なども行われているので、タイミングが良ければ参加してみるのもおすすめ!
「キウス周堤墓群」へは新千歳空港から約13.4km, 車で15分ほど。最寄りの千歳東IC(道東自動車道)からは約800m,車で1分ほどです。
- 営業時間 : -
- 住所 : 千歳市中央 キウス周堤墓群
- 駐車場:あり(無料)
千歳市埋蔵文化財センター
2005年3月末に閉校した旧長都小中学校の校舎が2010年4月にリニューアルし「千歳市埋蔵文化財センター」として一般公開されています。
ここではキウス周堤墓群で出土した磨製石棒の展示など特設コーナーが設置されているほか、新千歳空港の建設に伴う大規模な発掘調査で出土した土器や石器などが展示されています。
キウス周堤墓群からは約6.8km,車で8分ほど。開館は月〜金曜日と毎月第2日曜日(年末年始休)の9:00〜17:00で、入館は無料です。
② 北黄金貝塚/伊達市
噴火湾を臨む丘陵にある伊達市の「北黄金貝塚」は、縄文時代前期(およそ7000〜4500年前)の集落遺跡。
北海道にある縄文貝塚の1/5の面積を占める広大な敷地内は「北黄金貝塚公園」として整備・公開されています。
ここで発見された5ヶ所の貝塚のほか竪穴建物の住居跡や墓、水場、祭祀場からは縄文人の暮らしぶりや豊かな精神文化をうかがい知ることができます。
貝塚からはハマグリ、カキ、ホタテなどの貝類が出土しているほか、マグロやヒラメなどの魚骨、オットセイやクジラなどの海獣類の骨も数多く見つかっています。
現在は海岸線から400mほど離れているこの地ですが、約6000年前には丘の裾まで海があり、その後の気候の変動により海は丘から離れていきました。縄文人の集落や貝塚はそれに合わせて海の近くに移していった様子がわかります。
「北黄金貝塚」へは噴火湾(内浦湾)の海岸線沿いの国道37号からすぐ。室蘭IC(道央自動車道)からは約7.2km, 車で10分ほどです。
- 営業時間 : -
- 住所 : 伊達市北黄金町 北黄金貝塚
- 駐車場:あり(無料)
北黄金貝塚情報センター
北黄金貝塚に隣接する「北黄金貝塚情報センター」では遺跡概要のパネル展示のほか、この地で発掘された土器・石器などが展示されていて、北黄金貝塚での縄文人の生活や祭祀、儀礼をうかがい知ることができます。
開館は毎年4月1日〜11月30日(冬期間閉鎖)の9:00〜17:00で入館は無料です。
③ 入江貝塚/洞爺湖町
噴火湾を臨む丘陵にある洞爺湖町の遺跡が「入江貝塚」です。
縄文時代の後期(おおそ3800年前)の集落遺跡で、貝塚からは貝類のほか魚骨、海獣類の骨が見つかっていて、400mほど離れて隣接する「高砂貝塚」とともに沿岸地域の縄文人のくらしぶりを示す重要な遺跡とされています。
敷地内は「入江貝塚公園」として整備され、園内のいたるところに発掘時の様子や出土品から当時のくらしぶりを伝えるパネル展示が設置されています。
ここには約20mにわたる貝層の様子を見ることができる露出展示の“貝塚トンネル”や、竪穴住居跡と土葺き屋根の住居も復元・公開されていて、見応えがあっておすすめ!
- 営業時間 : -
- 住所 : 洞爺湖町入江190-108 入江貝塚
- TEL : 0142-76-5802(入江・高砂貝塚館)
- 駐車場:なし
※入江・高砂貝塚館から徒歩5分
④ 高砂貝塚/洞爺湖町
洞爺湖町の噴火湾沿岸の遺跡のもうひとつが「高砂貝塚」です。
隣接の「入江貝塚」とともに、縄文時代後期の重要な遺跡として近年になって追加指定を受けました。
ここからは手足を折り曲げて埋葬される屈葬で葬られた人骨や、副葬品と思われる土器や土偶も見つかっています。
園内は「高砂貝塚公園」として整備が進められていて、土層中の花粉化石の分析から縄文時代にこの地を覆っていたクリなどの落葉広葉樹が植樹された“縄文の森”や現世の貝殻で再現された“貝塚”など、見どころも多い充実した史跡公園です。
広い園内をゆっくりと散策をしながら、縄文の風を感じて縄文ロマンに想いを馳せてみるのもおすすめですよ!
- 営業時間 : -
- 住所 : 洞爺湖町高砂町52 高砂貝塚
- TEL : 0142-76-5802(入江・高砂貝塚館)
- 駐車場:あり(無料)
入江・高砂貝塚館
「入江・高砂貝塚館」では、入江貝塚から出土した縄文時代中〜後期の土器、高砂貝塚から出土した縄文時代晩期の土器や土偶・銛頭(もりがしら)などが展示されているので、両貝塚の見学の前後に立ち寄ると、さらに理解を深めることができます。
入江貝塚と高砂貝塚の中間に位置し、高砂貝塚へはここから約100mで徒歩で2分ほど、入江貝塚へは約350mで徒歩で5分ほどです。
特に駐車場がない入江貝塚へは、ここで車を駐めて徒歩で向かうのがおすすめです。
開館は毎年4月1日〜11月30日(冬期間閉鎖)の火〜日曜日、9:00〜17:00で開館しています。入館は大人150円/小・中・高校生100円。
⑤ 大船遺跡/函館市
渡島半島の東岸、標高30~50メートルの海岸段丘上にある「大船遺跡」は、縄文時代前期〜中期(およそ5500〜4000年前)の東日本を代表する大規模な集落遺跡。
大小120軒を超える竪穴居住域と盛土遺構があり、膨大な量の土器や石器、焼土などが出土しています。
この遺跡の特徴でもある深く彫り込まれた円形の床と柱を立てた様子がわかる住居跡、そして発掘調査の成果をもとにクリの木が用いられた住居の骨組みが再現されています。
この高台からは太平洋を臨み、背後には落葉広葉樹の森が広がっています。
豊富な水産資源による漁労とともに、山野の食料資源にも恵まれていたとされ、それを示すように住居跡は重なり合うように存在し、この地で数百年にわたって定住していたことを物語っています。
「大船遺跡」へは函館空港から約33km, 車で35分ほど。最寄りの大沼公園IC(道央自動車道)からは約35km, 車で40分ほどです。
- 営業時間 : -
- 住所 : 函館市大船町575-1
- TEL : 0138-25-2030(大船遺跡管理棟)
- 駐車場:あり(無料)
大船遺跡管理棟
大船遺跡に隣接する「大船遺跡管理棟」では、遺跡の概要を学べるパネルが展示されていたり遺跡の全景を俯瞰できるジオラマ模型の展示があり、大船遺跡についてより理解を深めることができます。
トイレや休憩スペースとしても利用できるので、ぜひ立ち寄ってみて。
開館は4~10月が9:00〜17:00、11月は9:00〜16:00で入館は無料です。
⑥ 垣ノ島遺跡/函館市
渡島半島の南茅部地区にある「垣ノ島遺跡」は、縄文時代早期前半〜後期後半(およそ9000〜3000年前)の集落遺跡で、同時代の遺跡として道内で最大規模、さらに今回の世界遺産に登録された道内6カ所の構成資産の中で最古の遺跡です。
約6000年の長きにわたって縄文人が定住していたことを示している各時代ごとの住居跡をはじめ、土器や石器の生活用具も数多く見つかっています。
この遺跡では、約6500年前の墓から出土している幼くして亡くなった子どもの形見と考えられている“足形付土版”や、道具や動物の魂を送る祭祀・儀礼の空間である“送り場”と考えられている約5000~4000年前の盛り土遺構など、縄文人の精神性や精神文化も垣間見ることができます。
「垣ノ島遺跡」へは函館空港から約28km, 車で30分ほど。最寄りの大沼公園IC(道央自動車道)からは約40km, 車で43分ほどです。
- 営業時間 : -
- 住所 : 函館市臼尻町 垣ノ島遺跡
- TEL : 0138-25-2030(縄文文化交流センター)
- 駐車場:あり(無料)
函館市縄文文化交流センター
垣ノ島遺跡に隣接している「函館市縄文文化交流センター」では、南茅部の縄文遺跡群を中心に函館市内の縄文遺跡から出土した土器や石器など数多くが展示されています。
「道の駅・縄文ロマン南かやべ」としてドライブスポットとしても有名で、様々なミュージアムグッズも人気!
ここには、著保内野遺跡から出土した北海道で唯一の国宝に指定されている中空土偶の“茅空(かっくう)”も展示されているので必見!
開館は4~10月が9:00〜17:00、11~3月は9:00〜16:30で(月曜日と毎月最終金曜日、年末年始休館)、入館は大人300円/小・中・高校生、大学生150円。
『北海道・北東北の縄文遺跡群』はなぜ世界遺産になった?その理由とは
今からおよそ15,000〜2,400年前、日本列島では狩猟・漁労・採集を行い、土器や磨製石器を使った生活が営まれていました。
これが、日本史の時代区分のひとつである「縄文時代」です。
縄文時代の人々は、縦穴住居を建て、集落(ムラ)を作り、定住をはじめるようになりました。その生活の中では道具や動物が持つ魂を送る祭祀・儀礼が行われ、死者は丁重に弔うなど複雑な精神文化を持つようになったと考えられています。
このような生活は1万年もの長きにわたり、その一連の流れを説明できる遺跡群が北海道および青森県・岩手県・秋田県の4道県に集中していることから、『北海道・北東北の縄文遺跡群』として世界遺産への登録が目指され、2021年7月に正式に登録されることになったのです。