にしんそばーーという料理を知っていますか?

「北海道の郷土料理でしょ?」という方もいれば「京都の名物料理だよね!」という方もいますよね。

蕎麦の上に身欠きニシンの甘露煮をのせたシンプルなこの料理のルーツを探ると、北海道と関西をつなぐ歴史を知ることができるんですよ。

北海道?それとも京都?ニシン蕎麦のルーツとは

「にしんそば」ってどんな料理?

■北海道や京都で古くから親しまれている『にしんそば』

『にしんそば(鰊蕎麦)』とは、一般的に暖かいお蕎麦の上に身欠きニシンの甘露煮を具材としてのせたシンプルな料理。

馴染みのない方も多いかもしれませんが、北海道の日本海側にある町や京都では古くから親しまれてきた庶民の味で、「北海道の郷土料理」あるいは「京都の名物料理」として知られています。

なぜ、北海道と京都という離れた地域で『にしんそば』という料理が食されるようになったのでしょうか?そのルーツについて探ってみました!

北海道のニシン漁と北前船
■北海道江差町にある廻船問屋の商家・横山家

江戸時代の中期から昭和初期にかけて、北海道はニシン漁に沸いていました。

江差や小樽、留萌など北海道の日本海側にある町は漁場として栄え、ニシン漁で財を成した網元によって建てられた鰊御殿と呼ばれる豪華な木造住居が今も残されていて、当時の繁栄を伝えています。

北海道で獲れたニシンは、身欠きニシンや鰊粕に加工され、北前船によって本州まで運ばれました。

北前船(きたまえぶね)とは、北海道と大阪を日本海側のいくつかの港を経由しながら下関をまわって瀬戸内を往来し、寄港地で商品を売り買いしながら利益を上げていた廻船のこと。

ニシン漁とともに北前船の寄港地として栄華を極めたのが道南にある江差で、“江差の五月は江戸にもない”といわれるほど活気に溢れていたそうです。

北前船が支えた京都・大阪の食文化
■関西ではおせちでもよく食される昆布巻き

北前船によって京都や大阪へ運ばれた身欠きニシンは、棒煮(甘露煮)や炊いたん(炊いたもの)など、関西の食に欠かせないものになっていきます。

そして、北前船が運んだもうひとつの北海道の特産品が、昆布です。昆布が獲れない関西で“昆布だし”が主流となっているのは、寺院が集中する京都や大阪で精進料理の出汁として昆布が重宝され、その後に庶民にまで広まったことに由来します。

この様に、北前船が運んだ北海道のニシンや昆布は、関西の食文化に大きな影響を与え、その後の和食の礎となっていきました。

ニシンそばの発祥は北海道?それとも京都?
■元祖といわれる京都・松葉の『にしんそば』

では、『にしんそば』の発祥はどこなのでしょうか?

これは、1882年(明治15年)頃に京都にある蕎麦店「松葉」の二代目松野与三吉により考案されたのが起源である、というのが定説です。

関西といえば「そば」よりも「うどん」の方がよく食されるイメージがありますが、「そば」が寺院での食文化として発展した京都では、古くからよく食されていました。

北前船によって運ばれ、関西で根付いた身欠きニシンが京都のそば文化と出会い、『にしんそば』は“京の名物料理”として浸透していったのです。

一方、江差の豪商「横山家」でも古くから『にしんそば』のレシピが伝わっていて、これは北海道における『にしんそば』のルーツといわれています。

ニシン漁で栄えた江差や小樽・留萌では『にしんそば』を提供する料理店も多く、いまでは“北海道の郷土料理”としても全国に知られるようになりました。

北海道と京都の『にしんそば』に違いはある?

北海道と京都で古くから親しまれてきた『にしんそば』ですが、ニシンの甘露煮をのせた蕎麦、という点で共通するものの、異なる点もあります。

それは、京都のものが薄口醤油の上品な味付けで澄んだ汁なのに対して、北海道は濃口醤油を使っていてほのかに甘い味付けの汁ということ。

また、薬味のネギは京都のものは関西で一般的な青ネギ(九条ネギ)であるのに対して、北海道は東日本で一般的な白ネギです。

小樽蕎麦屋 籔半
■小樽・藪半の『にしんそば』

北海道で『にしんそば』を食べるなら、おすすめなのが「藪半(やぶはん)」。かつてニシン漁に沸いた小樽にある蕎麦の名店です。

前浜で獲れ、一夜干しにしたものをほろほろに柔らかく煮込まれたニシンの棒煮は別皿で供されます。お蕎麦の上にのせると、蕎麦つゆのコクが一段増したようにさらに美味しく食べることができますよ!

■小樽静屋通り沿いにある風情ある佇まいが印象的な店構え

お店があるのは、かつてニシン漁で財を成した網元の別宅と建てられた木造住宅と石蔵が部分保存された歴史建造物。

そんな趣ある老舗の蕎麦店で『にしんそば』を味わいながら、食文化の歴史に想いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

小樽市稲穂2丁目19-14 静屋通り
  1. 営業時間 :  
    ① 11:00 - 16:00
    ② 17:00 - 20:00
  2. 住所 : 小樽市稲穂2丁目19-14 静屋通り
  3. TEL : 0134-33-1212
  4. 駐車場:あり(9台)