北海道開拓の人材を育成するため日本で初めて学士号の授与権を持つ高等教育機関として設置された札幌農学校。現在の北海道大学の前身にあたります。

札幌市中心部にあって緑が豊かな大学構内には、北海道開拓の記憶を辿ることができる歴史・文化遺産にあふれています。ここから、さっぽろ・ふるさと文化百選にも選定されている「札幌農学校とクラーク博士」、「旧札幌農学校校舎」、「古河記念講堂」、「旧月寒種羊場」の足跡を辿ってみます。

北大構内で辿る、札幌農学校にまつわる開拓の記憶

札幌農学校とクラーク博士

札幌農学校は、北海道開拓のため欧米技術の導入と開拓人材の育成を目的に設置された、日本で初めて学士号の授与権を持つ高等教育機関でした。のちに北海道帝国大学を経て、現在では北海道大学として全国でも屈指の総合大学です。

札幌市中心部にあって緑があふれる広い構内の中に、北海道開拓の記憶を辿ることができる歴史・文化遺産にあふれています。

さっぽろ・ふるさと文化百選には「札幌農学校とクラーク博士」、「旧札幌農学校校舎」、「古河記念講堂」、「旧月寒種羊場」が選定されています。

「Boys, be ambitious(少年よ、大志を抱け)」 – W.S.クラーク

■古河記念講堂のすぐ近くなある北大構内の「クラーク胸像」

札幌農学校の初代教頭として日本政府の要請を受けやってきたのが、当時マサチューセッツ農科大学(現マサチューセッツ大学アマースト校)の第3代学長として教えていたウィリアム・スミス・クラーク(クラーク博士)でした。

クラーク博士は農学指導に尽力。札幌農学校での滞在はわずか8ヶ月という短い期間でしたが、北海道の近代酪農の祖として「北海道酪農の父」とも呼ばれています。札幌農学校は新渡戸稲造や思想家の内村鑑三、土木工学の広井勇、植物学の宮部金吾ら北海道開拓のみならず、その後の日本の発展に大きな影響を与える人材を多く輩出しました。

クラーク博士が札幌農学校を去る際に学生に伝えた、”Boys,Be,Ambitious !(少年よ、大志を抱け)” はあまりにも有名な言葉です。クラーク博士は帰国後も札幌での生活を生涯忘れることはなく、死の間際には「札幌で過ごした8ヶ月間こそ、私の人生で最も輝かしい時だった」と言い残したとも伝えられています。

北大にある「クラーク像」と羊ケ丘展望台の「クラーク像」

■さやわかな初夏の風が吹く羊ケ丘展望台とクラーク博士

札幌・北海道を代表する観光名所としても人気の羊ケ丘展望台にある、右腕を伸ばし、遠く札幌中心部へ向け指差す銅像と共に知られるクラーク博士像。

札幌農学校があった現在の北海道大学にも幾つかクラーク像が設置されています。古河記念講堂前にある胸像が最も有名で、1926年に設置されたものです。しかし、構内のクラーク像に観光客が押し寄せていたため、博士の来道100年にあたる1976年に羊ケ丘へ全身像が新たに建立されました。これが、あの有名なさっぽろ羊ケ丘展望台(旧月寒種羊場)のクラーク博士像です。

羊ケ丘の前身は日本のめん羊の中心地となった「月寒種羊場」で、現在の羊ケ丘の地名の由来になっています。戦後は北海道農業試験場として羊を飼育していました。現在は北海道農業研究センターとして、敷地の一部がさっぽろ羊ケ丘展望台として解放されています。いまでも羊の放牧がされていて、北海道屈指の観光名所として大人気です。かつて羊毛の国内自給を目的に始まった種羊場の開設ですが、あわせて羊肉の活用法も研究され、試行錯誤の末に生まれた「ジンギスカン」は北海道を代表する郷土料理となりました。

美味しい食材に恵まれ、多くの人を魅了する北海道。今ではそれを楽しむために多くの人が北海道へ訪れています。口にする時、その開拓の原点を想うと、さらに味わい深く感じることができるかもしれませんね。

旧札幌農学校校舎

札幌農学校時代の昆虫学養蚕学教室が「旧札幌農学校校舎」として札幌・ふるさと文化百選に選定されており、いまも北9条西8丁目、北海道大学構内に残されています。

1901年に建てられたこの校舎は北海道大学内に残る最古の校舎で、2000年には国の登録有形文化財にも選定されています。緑あふれる北大構内にも馴染む緑色の屋根と白い壁が印象的なこの建物ですが、竣工当時は瓦葺きの屋根だったそうです。

付近にはその他にも、旧図書館読書室や書庫など農学校時代の建物も多く残っています。

古河記念講堂

札幌農学校は1907年に東北帝国大学農科大学に改組され、この建物は1909年に林学教室として古河家の寄贈により建てられました。現在では文学研究科の校舎として使用されています。

左右両翼のマンサード式の屋根を置いたフランスルネッサンス風の建物で、札幌における木造洋風建築の代表的なもののひとつに数えられています。

札幌・ふるさと文化百選に選定されています。