十勝に訪れたらぜひ立ち寄ってみてほしい場所が「池田ワイン城」です。

人口およそ6000人の小さな町でありながら、十勝ワインの歴史を築きあげてきた池田町。

ブドウが育たないと言われていた土地で、多くの苦労を乗り越えワインづくりを成功させた先人たちのワイン作りにかけた熱い思いに触れてみませんか?

そこには、およそ70年前に池田町を襲った大災害や冷害から町を生き返らせるために、試行錯誤を繰り返しブドウ栽培とワイン製造に挑み続けてきた歴史がありました。

町を見下ろすワイン城、十勝ワインとともに池田町の歴史を知る

池田町がブドウの町、ワインの町と呼ばれるのはなぜ?

日本初の自治体ワイナリーとして十勝ワインの歴史を築いてきたのが「いけだワイン城」です。正式名称は池田町ブドウ・ブドウ酒研究所。

その外観は中世ヨーロッパの立派なお城そのもので、池田町の小高い丘の上から街を見下ろす形でそびえたっています。

2020年にリニューアルオープンし、十勝ワインの歴史を学びながら建物内を見学でき、ワインの試飲や販売、さらにはレストランも併設される観光スポットになりました。

展望デッキやレストラン内から臨む町並みはとても美しく、ワイングラス片手にその景色を眺める特別な時間を味わうことができるでしょう。

敷地内に併設されている工場も見学が可能で、ワインの製造工程や「なるほど」「そーなんだ」と思える情報をたくさん知ることができます。

池田町が「ブドウの町」「ワインの町」と呼ばれるようになったのは、1952年に起きた十勝沖地震、1953年と1954年に2年連続で起きた大冷害により、町は大きな赤字を生み出し、「財政再建団体」に陥ってしまったところまでさかのぼります。

農業が基幹産業であった池田町ですが、これらの災害によって大変苦しい局面を迎えることになりました。
この時、池田町長に当選したのが丸谷金保でした。丸谷町長は山に自生するヤマブドウを見て、この土地でブドウ栽培が出来るのではと考え、ブドウ栽培による農業所得を向上させる計画に着手したのです。

これが、池田町がブドウの町、ワインの町と言われる始まりになります。
こうして1963年、国内初となる自治体経営のワイン醸造が始まりました。

冷涼な十勝地方で挑むブドウ栽培の苦労と努力

丸谷町長の発案に賛同した農村青年らによって「ブドウ愛好会」が結成され、壮大なプロジェクトが始まりました。

それは「日本で最も冷涼な土地でのブドウ栽培」を意味し、多くの障壁を乗り越える必要があります。

十勝地方は、夏場の最高気温の高さや夜間との寒暖差の大きさから、ブドウが糖度を上げやすく酸を残しやすいといった好条件な土地でもあります。

しかし、冬は晴天率が高いため、放射冷却によって氷点下20度を下回る寒さを記録し、ブドウの木の水分が凍結し繊維を傷めつけてしまいます。
また、比較的降雪量が少なく、豪雪地で行うような積雪によってブドウを守る越冬を行うことができず、ブドウが枯死してしまうリスクが高いのです。

そこで、「低姿」「培土」という独自の越冬方法を確立させてブドウ栽培に挑んできました。

・低姿:ブドウの木を斜めに植え、剪定後の高さを50cm以内と低く仕立てる
・培土:土が凍る前にブドウの木に土を覆いかぶせる

北海道では、余市や富良野、岩見沢もワインの産地として知られていますが、年間の積算温度で比較してもその差は大きく、十勝ワインは全国でも極めて冷涼な地で作られていることになります。

厳しい条件でありながらも、独自の越冬方法を開発し、苦労を重ねながら「十勝ワイン」の歴史をつないできたことが分かります。

2万ものブドウ交配から残った2品種、「清舞」「山幸」

培土作業や、春にその土を排土する作業はブドウ樹を傷つけないために手作業でなければなりません。
それは規模を拡大していくためには、大きな課題となります。

そこで取り組まれたのが、耐寒性に優れ、かつワイン用品種としてのブドウ開発でした。

十勝の気候条件でも十分に生育期間を確保できる「清見」が開発され、培土作業等の手作業を必要としない栽培を実現しました。

ブドウの木には1000本に1本の確率で立派に実をつける「枝変わり」という現象があります。

ブドウ栽培に失敗が続いていた中で、池田町でも枝変わりが起きた苗気が見つかり、これが「清見」の原種になったと言われています。

失敗を繰り返しながら、何度も挑み続けた結果がまさに実を結んだ瞬間だったことが想像できますね。

そして、清見とヤマブドウとの交配を経て、「清舞」「山幸」といった品種を生み出すことに成功し、ワイン原料としての品質向上させることに成功したのでした。

重厚感あふれる「いけだワイン城」へ潜入


正面入り口に立つと、その大きさや重厚感に圧倒されつつ、おそるおそる足を踏み入れました。

外観のイメージとは変わって、温かみのある照明で明るく照らされた城内に安心感を覚えつつ、早速目に飛び込んでくるのが壁一面にずらっとディスプレイされたワインの数々。

ワイン売り場にはワインの樽が陳列台として利用され、おすすめワインが並んでいます。

せっかく来たのだから早くお土産のワインを買いたい、そんな気持ちを抑えてまずは城内の見学です。

廊ミュージアムでワイン作りの歴史を学びながら、展望テラスを目指す

ワイン城は地下2階に地下熟成室があり、最上階は4階のレストラン、その屋上は展望テラスとなっています。

城内には見学ルートの案内も出ているので安心して回ることができます。見学は無料ですが、別に事前予約制で「体験ガイドツアー」(毎週土日祝日のみ)も用意されており、専門スタッフによる詳しい説明を受けながら見学することができます。

さらにワインテイスティングといった体験プランもあり、こちらは2000円の有料コースになります。
ワイン好きにはたまらない体験ツアーになること間違いなしです。


地下2階には熟成室がきれいに並んだ樽の中でワインが静かに眠っています。
残念ながらこの日は中に入ることができなかったのですが、一度は中に入ってその空間を肌で感じてみたいものです。


1階にはブランデー蒸留室があり、ガラス越しにその内部を除くと、あまり見る機会のない蒸留器も見ることができます。
ブランデーはワインを蒸留することで作られるということも、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。

地下1階と2階は廊ミュージアムとなっており、ワインの製造方法やブドウ栽培の方法など十勝ワインの歴史や知識を学べる展示がいくつもなされています。
ワインのことに詳しくない方でも、足を止めてじっくり楽しめるように分かりやすい内容にまとめられていました。
ワイン城を出た時には、きっとワインについての知識や興味が深まっていることでしょう。

2階にはライブラリもあり、ワインに関する書籍がたくさん並んでいます。
休憩がてら椅子に座って1冊手に取ってみるのもいいですね。

4階は手前がフードカウンター、奥側がレストランになっています。
フードカウンターでは、気軽にワインを楽しめるフロアで、ソフトクリームをはじめとするスイーツやテイクアウトのお弁当などが販売されています。

奥のレストランでは十勝の食材を使ったこだわりの料理をゆっくりと楽しむことができます。
十勝牛のハンバーグやワイン城のビーフカレー、十勝牛サーロインステーキなど、そのほかにも豊富なメニューが取り揃えられています。

4階からの景色はとても見晴らしがよく、ワインや食事を楽しみながら有意義な時間を過ごすことができます。

最後は屋上展望広場です。

エレベーターか屋上に通じるA階段を利用してのぼると、目の前に十勝平野の広大な田園風景を一望することができます。

屋上からの景色を楽しんだ後は、1回のショッピングエリアでお土産にワインを購入。

お城の裏にはワイン工場があり、瓶詰め作業の様子なども見学することができます。


こちらの写真はスパークリングワインの製造室ですね。

ゆっくりと見学コースを回ったので気がつけば90分ほどが経っていました。

普段見ることができないものを見る高揚感や、知らなかったことを知る喜びや好奇心、そして背景にあるストーリーに心を震わされ、存分に満喫することが出来ました。

この土地でブドウ栽培を確立し、いつしか「ブドウの町」「ワインの町」と称されるまで、多くの人々の苦労や努力があることを、小高い丘にそびえる重厚感あふれるワイン城が教えてくれているようにも感じます。

この夏のお出かけコースに「いけだワイン城」はいかがでしょうか。

池田町字清見83-4
  1. 営業時間 : 9:00 - 17:00
  2. 住所 : 池田町字清見83-4
  3. 駐車場:無料(100台)